究極の悪とは

私はだいたい殺人事件があっても犯人に感情移入するほうなので、
そんなに犯人が悪いとは思わない。
要は犯罪に走る人間というのは他人を思いやる気持ちより欲望のほうが強い人間なのだ。
または追い詰められてしまって、他人を思いやる気持ちが雲散霧消してしまったという場合も多い。
ということで、犯罪も欲望が相対的に理性に優ったと言うだけのことで、何も不思議はない。
欲望に負けただけで、人を思いやる気持ちなり理性なりもそれなりにあったはずだと思うからである。
だが、犯罪以外のところで、究極の悪というものに遭遇することがある。
私はサウナに良く行くのだが、サウナのテレビでさんま御殿を見ていた。
周りにいる客達も笑いながら楽しそうに見ていたと思う。
ところが、声のでかいオヤジが入ってきたと思うと、サウナの従業員をつかまえて、
巨人戦にしてしまった。
しかも、その巨人対日ハム戦は8点差くらいついていて、巨人ファンであっても日ハムファンであってもすぐに興味を失うたぐいのものであった。
案の定、10分くらいそのオヤジは試合を見た後、飽きたのかサウナから出て、帰ってしまった。
おいおい。
つまらない巨人戦が延々と映ったままだよ。
私もオヤジが出た後にさんま御殿に再びチャンネルを変えようとも思ったが、いまさらさんま御殿の気持ちではない。
そのオヤジのせいでサウナの中にあんなに人がいたのに、全く人がいなくなって、ガラガラのサウナルームの中で一方的な巨人戦中継が映っているだけ。
とても気持ちが荒廃した。
あのオヤジこそが究極の悪だと思う。
究極の悪とは全く他人の気持ちを考えることができないことである。
はなっから他人の心の存在を無視したオヤジは私のとってはとうてい理解することができない怪物である。
そういう人間が私にとって一番苦手な人間である。