福満しげゆき先生インタビュー

ブレイクマックスというコンビニで売っているエロ本の福満しげゆき先生インタビューを買い損ねてしまい、たまたま行ったブックオフで入手した。
『BREAK Max』7月号に掲載された吉田豪によるインタビューである。
かなり笑った。
エロ雑誌という性質上、読めなかった人も多いと思うので、気になったところを抜粋して紹介したい。ブレイクマックスの吉田豪の連載は今月号の長門裕之も面白かったので、読んでみてほしい。

−(略)前は編集との打ち合わせで喫茶店に入るのも怖かったって言ってましたねお金がなくて。
福満 今日なんかも、雨なのに居酒屋の外でずっと立ってましたからね……。5分ぐらい前に来るのが常識だろって思いながら。いつも僕、なんでも1時間前に行くんですよ。
−早すぎですよ。それ(笑)
福満 途中でなにかトラブルがあって、ロスがあるかもしれないじゃないですか。だから1時間前に行って、時間潰したりして。それも喫茶店とかにひとりで入れるようになりましたから、だいぶよくなったんですけど。
−前は入れなかったわけですね(笑)
福満 電車もすごい苦手だってんですよ。1回、違う電車に乗って変なとこ行っちゃったんで、そういうのもすごい怖いんですよ。収入が上がると、そういう意味でも余裕ですけどね。最悪、迷子になってもタクシーに乗ればいいと思いますもん。まあ、そういう事態になったことはないですけど。高校1年のときも電車で変なとこに着いちゃって、そこらに捨ててあるような自転車に乗って帰ろうと思って、逮捕されて警察署に1泊したこともありますからね、そのときは。

いきなりインタビュアーに苦言を呈する福満先生さすがだ。
やっぱりネガティブなだけに不運に遭いやすく、ちょっとのことで警察のご厄介にもなる模様。

女性カメラマン 写真撮ってもいいですか?
福満 いや……だめです、すいません……。ものすごくイジメられるんですよ、顔を出すと。たとえば編集者とかでも、少年誌の若い社員なんかは、初対面の会って何秒かで「自分と全然違う漫画を描いててどういう気分なんですか?」なんて聞いてきたりするんですよ!それで、そいつに皮肉をなんか言い返してやろうと思ったら、酔ってたんでよく似た違う人に言ってたんですけど……。
−それで写真は出さなくなったんですか?
福満 いや……でもホントにね、自分が逆の立場だったら平気で人に言うようなことも、自分が言われると腹が立つじゃないですか!
〈略〉
福満 「あれを描いたヤツを見てみたい」っていう世間からの需要があって、隠しきれなくなっていくわけですね。ただ言う人は自由ですけど、いろいろ言ってくれますから、それを言ってるお前に会いたいと僕は思いますけど。「お前がそういう漫画を描くとして、写真でも鏡でも見て写生みたいにしてやるのか」と。やるんだったら「すいません」と言いますけども。そういうんじゃないと思うんですよね……。

福満先生の顔についてはイメージが違うといろんなブログや掲示板で言われているようだ。
グーグルで検索するとすぐ出てくる。
それについての先生の反論はもっともだと思う。
それにしても自分は言われると嫌だけど、自分は平気で言うって。自覚してるんだなあ。

−文章では意外と毒舌ですからね。
福満 ……そうですかね?
−『SPA』の映画評の連載とかだと。
福満 あれは95%ぐらいはちゃんと自分で書いてますけど、編集者の方が直して、自分の意見とかオチを変えてくることがあるんですよ。何度もその方とトラブルになってるんで、もういいやと思ってるんですけど。その連載を辞める気で、『漫画アクション』にその人の悪口をいま描いてるんですけどね。
−ホントに容赦しないですよね(笑)
福満 いや、ずっと我慢してきたんですよ!ホントにひどいこといっぱいされてきたんで。簡単に言うと、挿絵を頼まれて、「ホント忙しいんで、すいません」って断ったら「この話はウチの他の編集部にも伝わると思うんですけど、今後ウチからの挿絵の仕事は全部断るってことになっても構わないんですね」みたいなことを言われて、ガチャッと電話を切られて……。そういうのキツいじゃないですか。だいたい年下ですよ。その人!
−また年齢の話ですか(笑)。

年齢にこだわる福満先生、面白い。
編集者と現在進行形で揉めているのか。
妻を漫画に出すことについての合意は。

福満 (略)それは漫画を描くってことじゃなくても、たとえば僕がよそで勃起した、みたいなことも……
−あれはホントに勃起してるんですか?
福満 あの……。もののたとえですよ!

福満先生の漫画にでで来るあの勃起のくだりは確かに気になる。

−幸せになってはきてるんですか?
福満 そう思いますよ。ただですね、このご時世、たとえば一代で財を成した方がいて、老いて孫もできて人生、楽しい、と。でも孫が歩いててそこらへんのアホに刺されてしまえば、それまでですからね。だから皆さん、おおいに誤解してると思うんですよ。そんなもんですよ、幸せなんて。これ古谷実の漫画のせいですよ、僕がこんな考え方になったのは。あと『闇金ウシジマくん』のせいです!

これはよく分かるなあ。古谷実の漫画も闇金ウシジマ君も読んでてすごく不安になる。

福満 (略)まあ、でもいまは単純に仕事があることが嬉しいです。ずっと収入がなくて仕事がないような時期が、何年も何年もありましたからね。
−それでいろいろバイトして。
福満 妻に言われて、あれ漫画では結構働いてるように見えるかもしれないですけどね、実は週2回しか働いてなかったんですね。最初は働くんですけど、疲れてきちゃって。でも怠け者と一緒にしないでほしいのは、僕は全力出した結果ダメだったんですよ!

2ちゃんねるのコピペのようなダメさ加減だ。

−送られる雑誌は読んでます?
福満 読むものは……。憎んでいる人も、もちろんいますけども……。優遇されてね……。
−優遇されるものは許せない、と。
福満 でも最近僕も優遇され始めてみると、こんなに心強いことはないですね。
−ダハハハハ!される側になると!
福満 だって、漫画を描いて、それを予告とか出してプッシュしてもらえるわけですからね、ゾクゾクしますね。これはいいなって。
−優遇されると、『漫画アクション』で秋山莉奈のグラビアプロデュースをさせてもらったりすることもあるわけだし(笑)
福満 欲出して要求すれば、もっとイケると思いますよ。でもね、そういうことをすると死ぬってパターンがよくあるじゃないですか。

優遇される人にはジェラシーを燃やすが、自分は優遇されたい、でもされすぎると不安だという。
浮気をしたいけど、できないという話から以下。

−でもそれをうまくやっている漫画家さんもいますよ。愛人を囲ってたりする人が。
福満 そういうのをうまくやってる人は、さっきの優遇されてるヤツなんか以上に僕は憎んでます。ものすごい憎しみですよ!その憎しみは半端じゃないですね。編集者レベルでも、すごい給料もらって、アイドルが来るような店に行って飲んだりしてるんですよ!若い編集者の男は、そこにあるグラビアの子がいたと言ってて、同じ店にいたってだけで、もう絶対許せなくなっちゃって。
−ただそれだけで(笑)
福満 田舎の大学出て東京来て、ちょっと頭よかったかもしれないけど……また、そいつの上司に当たる方が偉い方だったんで、その人の立ち居振る舞いそのまま引きずって僕に会いに来るんですよ。もう腹が立って腹が立って、キッチリイジメ抜いてやりましたけど。あと、ライターは敵だなと思ってます。
−なんですか、それ!ボクは敵じゃないですよ。「週刊朝日」でも紹介したし……。
福満 ああ、そうですね。でもなんか急に裏切る方もいるんですよ。「最近のあいつはダメだ」とか言い出して。警戒しないといけないなと思ってるんですけどね。あと、僕とかいろんな漫画家と知り合いだっていう業界感みたいなものを出すことによって、女とヤッてるヤツもいて。あれは腹立ちましたねえ。
−本人が全然やれてないのに(笑)
福満 ホントにそうですよ!ライターといえば最近、ネットでエレファントカシマシの人がラジオで怒ってる動画を見つけたんですけど、あれ見たら怖くなっちゃって夢に見て。
エレカシに怒られる夢ですか(笑)
福満 僕がライターでインタビューしたら、すごい顔近づけられて凄まれて、みたいな。僕、ライターに憧れてるんですよ。なんか試写会を観に行ったりしてね、偉そうにしてね。ちょっとのことを大きく言って、そういうのはいいなあなんて思うんですけどね。

屈折してるなあ。だがライターに対するやっかみとエレカシに対する恐怖は分かる気がする。
で、父親について

−かなり厳しかったらしいですね。
福満 厳しいっていうか。完全にキチガイだったんですけどね。暴力とかもひどくて、いまだったら完全逮捕なぐらいですよ。病院行ってましたからね。頭割れたりして。そういう父も歳をとってきて、一度は譲ろうと思ったんですけど、やっぱりウゼえなと思って。もうほどんど会ってないんですけど。

やっぱり毒舌な人というのは父親に虐待されて育った人が多いのだろうか。
有吉の家も暴力親父だったらしいし。

−人生で後悔してることとかあります?
福満 ああ、それはいろいろあります!16歳のときに、ちょっと知り合いを介して女の子と会うみたいなのがあったんですね。あのときにうまく振る舞えなかったのがもう……その類のことですね。いまだに夢に見るのは、同窓会でうまく振る舞えなくて、とか。
−出来ればやり直したいですか?
福満 やり直したい……ですね。僕、中学ぐらいまではそれなりに友達もいたし、なんなら女の子としゃべることもあったんですよ。それが高校入ってからの落差が半端じゃなくて、置いてかれたって感じがその……なんかもう耐えられなくてですね。ホントにこの年になって、やっと同級生の女どもは32歳か、と。32歳っていったらもう結婚してるだろうし、子供がいてもおかしくないし、そんなに可愛くなくなってる女もいるだろうし、いいやと思って、やっと気が楽になって。
−今まで引きずってきたけど。

なんか分かるなあ。
この人は基本的にダメ人間だと思うけれど、こういう感情を素直に表現するところがすごい。
モテる男についての話から

女性カメラマン いえ違うと思います。人によると思いますけど、私はモテる男の人より、そんなにモテない人のほうが好きです。
福満 結果的にそういうモテる男ってどうせ遊んでるから、私はモテない人のほうがいいやってやった結果、そいつはモテてやりまくりだったりするんですよ。逆に!そんなこと言ってられるのも若いうちだけですよ。女性はホントに若いときはちやほやされるけども、されなくなるんだってことはわかるじゃないですか、見てたら。だから言いますけど、すぐ夜道を歩いてて殺されるでしょ
−ダハハハハ!なんです、それ(笑)。
福満 それをニュースで見て、「私、歩くのやめた」って思えばいいじゃないですか!なのにまた夜歩いてて殺されるでしょ?バカなのかと思いますよね。モテる男と結婚して不倫されて、みたいなことも学ばないっていうか、そういう感じにできてますね、女性は。女の人は容姿だけで評価されるんですから(キッパリ)。偉そうなことを言ったり、文学的な話をしたりして、「へぇ〜っ」なんて言っても、そんなの全然アレですからね。
−言い切りますよねえ(笑)ボクは趣味とか話が合うかどうかが大きいですけどね。
福満 そうか……そうですね。僕も結婚して一緒にゲームしたり、一緒に好きなラジオを聴いたりできたら楽しいと思ってたんですけど、全部無理でしたね……(しみじみと)。

これはひどい。女性カメラマンに対する反発がこの発言につながったのだろう。女性コンプレックスもかなりあると見た。でも最後しみじみしちゃって。どっちなんだっていう。
で、妻について

−それぐらい趣味が合わない(笑)
福満 なにもですよ。ホント女で。趣味は服とか、なんて典型的なんだと思いますから。
−それを可愛いと思えるかでしょうね。
福満 ああ。顔が結構好みなんですよ。あとやっぱり、仕事のないときに働いてもらった恩義もありますからね。ただブワーッと稼いだら浮気してみたいなとは思いますけど。……思うがままにセックスしたいですね。
−ダハハハハ!それが夢で(笑)
福満 それが絶対に妻にバレないっていうのがあればですけどね。それは難しいですよ、なかなか。そんな都合がいいことは……。お金もなにもいらないならいいですけど……。

大好きな妻にもこんな感じ。
福満先生はキャバクラには行ったことはあるが、キャバクラ行った後に事故を起こして行かなくなってしまったという

福満 はい。こんなことやってると編集者さんから誘われることもありますけど、なんかこいつに弱み握らせたくないな、みたいな。あとからトラブルになることを想定しますと、弱みになりますからね、そういうのは。いまは若い女の編集者さんがひとりで来たりするんですけど、それはちょっとキャバクラ気分です。喫茶店で話して、「やあ」なんてちょっとカッコつけて、よく思われたい、みたいなのが。仕事面では満足してなくて、厳しく言ってやろうかなと思うんですけど、厳しくできないんですよ。どっかで不倫できる可能性みたいなものを残したいんでしょうね
−ダハハハハ!わかります(笑)

なんか私も分かってしまった。

−初体験では変わらなかったけど、結婚によって人生が変わったんじゃないですかね。
福満 そうですね。彼女ができたっていうぐらいじゃまだ不安でしたから、僕は結婚を急ぎましたもん。僕は、妻なんてホントにバカだと思ったんですけどね。ホント体目当てで結婚したんですけど、意外に優秀でしっかりしているんですよ。商売人の娘さんですからね。おかげでだいぶいろいろ助かってます。でもいまは僕のほうが人と会ったりして社会性があるぐらいですけどね。妻は家から出しませんから。出すと殺されますからね。
−ダハハハハ!治安が悪くて(笑)
福満 だけど、都会への怖さも抜けないですからね。新宿の交番とかあるほうの建物にも立ちんぼがいるじゃないですか。あんなヤツらはエイズに決まってますから(キッパリ)。
−ダハハハハ!そうですか(笑)
福満 そういうね。乱れてるのが……。
−どうしても許せない。
福満 いや、もちろん嫌いなんですけど、すごい興奮するんですよ(キッパリ)。

ずっとこの調子だなあ。
かなり分量があってのだが、密度が濃くて全部引用したくなるほどのインタビューだった。
これでも全体の5分の1もないくらいなので、手に入る人は雑誌を取り寄せて読んでみるといいと思う。
福満先生という人は不幸な少年時代青年時代を送った人にありがちな不幸に慣れているために
幸せになるのが不安だという人だと思う。
不幸を維持しようとして編集者と喧嘩したりするのだろう。
漫画がなかったらダメ人間だと思うが、なんでもかんでも自分の感情を隠すことなくさらけだすのがすごいと思う。そこに生まれる共感が読者の心を掴むのだろう。
周りにいる人は大変だと思うが、端で見ている分にはとても興味深い人だ。