福山雅治はなぜ嫌われないのか

オリ★スタ7月24日号を買った。吉田豪福山雅治インタビュー目当てである。
アイドル誌のインタビューということで、吉田豪のインタビューにしては短かったがいろいろわかったことがあった。
引用しつつ感想を書いてみたい。

まず、デビュー当時の福山は全く売れず、箸にも棒にもかからないありさまだったという。

−当時の福山さんで印象的なのは、いしかわじゅんさんのエッセイ漫画『フロムK』に出たことなんですよ。
福山 あ、はいはい。
−映画デビュー作『ほんの5g』で共演した話が書かれているのに、福山さんは資料がなくて顔が描かれてないんですよね。単行本のときも「福山君はたしかロッカー方面の人だったような気がする。その後あんまり見ないけどどうしたんだろうか?連絡をくれ」って書かれてたから、しみじみして。
福山 そうそう、まだ見ない頃。さすが、よくチェックしてますね!僕はこの映画に出る前から『フロムK』を読んで、いしかわさんを知ってたんです。現場でいちばん話したかった人もいしかわじゅんさんで、だから「出してください。田舎の友達に自慢しますから」って言って。昔からオタクというか、要はマイナーが好きだったんです。で、「人がまだあまり知らないけど素晴らしい才能なんだ」とか、クオリティを問うタイプなんですよね。

いしかわじゅんである。このマイナー指向というかサブカル指向がネットの住人に好かれるのだろう。タモリタモリ倶楽部というサブカル番組でネットでリスペクトされるようになったのと同じようなものだ。
だが、実はマイナーではなくてドメジャーでやりたいという。

−ただ、もともとバンドブームの頃にデビューしたこともあって、ザ・モッズとかが好きでARBの白浜(久)さんプロデュースで、みたいな感じだったわけですよね。途中で、そうじゃないなって気がしてきたんですか?
福山 っていうか、1枚、2枚、3枚と手を替え品を替え、スタッフの皆さんも知恵を絞ってくれて、まず単純に気づくんですよ。売れてなくても、やっぱり周りでたくさんの人が動いていることに。それまでは一応、アマチュアコピーバンドでしたけど、自分たちでバイトしたお金でチケット売ったりしてライヴをやってたんですよ。だから音楽をやるのにお金がかかるっていうことはわかってるわけですよ。そうすると、だんだん売れないっていう状況に対して、たいへん申し訳なく思えてくるんですよね。
−いろんな人が動けば動くほどに。
福山 はい。結局。この制作費もお寿司代も誰かが出してくれてるんだっていう。最初はかなり強いこだわりを持っていたんですよ。自分が体現できてないまでも、憧れとして持っていたロック的なるものを。そういうことをやりたかったんですけど、自分がやりたいことをやって、ちゃんとそれで採算が取れてるんならともかく、取れてないんですよ。だから3枚目までは試行錯誤してましたね。

この他人を思いやる心。anan好きな男特集号誌上で児玉清にいい奴だと絶賛されただけのことはある。これは嫌われようがない。
音楽で認められない福山はドラマに出ることを勧められるが…

福山 (略)で、右も左もわからないんですけど、食事会的なものでよく人に会わされてたんですよ。映画監督やドラマのプロデューサーに。こっちは演技やったこともないし、もっと言えば興味もないのに「出てみないか?」みたいな話になるわけですよ。でも人間、「出てみないか」って言われて、悪い気はしないんですよね。
−異性に「好きだ」って言われて嫌な気持ちがしないのと同じというか。
福山 だからよく言ってるんですけど口説かれると抱かれちゃう女の人の気持ちってこういうことなのかなって。「私、求められてる…」みたいな。
−特にそういう音楽で求められない時期だと、それは心に響きますよね。
福山 だから身体を許しちゃったんですよ(笑)。

下ネタである。福山は男のサセ子みたいなところもあるようだ。いい意味で主体性がないところがある。
先にドラマがヒットして俳優のイメージが先行してしまった福山であるが…

−どうしても俳優が本業で音楽が片手間なイメージになってきますよね。
福山 (略)やっぱりヒットしなきゃっていう思いがますます強くなりましたね、ドラマがヒットしたことによって。それで『MELODY』(93年)って曲を作ったんですけど、そのときは絶対ヒットさせてやる、みたいな感じで。

音楽でも栄冠を手に入れる福山。ヒットしなきゃと思って、本当にヒットするというのは才能だ。
やっぱり、福山といえば下ネタなわけだが。

−読者の人からも「初めてエロトークをしたときは事務所に何か言われたりしたんですか?」(愛知県・14歳女性)って質問が来てましたけど。
福山 全然でしたね。いままで僕のトークの部分で事務所にダメ出しされたことは一度もないです。たぶん、「こいつは好きでしゃべってるだろうから、なに言ってもムダだな」的なものがあるんじゃないですかね。『オールナイトニッポン』とかFMもそうですけど、ラジオは20年近くやってますからね。
    (略)
−でも、下ネタって平和ですよね。基本的には誰も傷つけないわけだし。
福山 まあ、傷つける下ネタもたまにありますけどね。「昔、付き合ってた子とさあ」的な。あれは下ネタとは言わないんです。下ネタは自虐ですよ。
−笑われなきゃいけないんですね。
福山 そうです!だから自分の下半身の話が重要なんですよ。「えっ、福山もそうなんだ!」っていう。いままでそれをちゃんと言ってくれた人がいなかったんですよね。日本のエンターテイメントの世界で。
−芸人さんではいても、ミュージシャン側ではまずいないですよね。
福山 そうです。大手クライアントのCMに起用される人間が、下半身のサイズをカミングアウトすることはなかったんです。なぜならその必要がないから。
−ダハハハハ!その告白によって他のCMは来ないですからね(笑)。
福山 これでCMが来ることはない。高須クリニックぐらいしか。

なるほど、同じ下ネタでも自虐的な要素の強い下ネタを言い続けることで、福山は特に男子から支持を得ている。男子というのは同性の自虐ネタが好きな種族だからである。
福山の育ってきた家庭環境に続く。

−リリーさんの名前が出ましたけど(*東京の飲み屋ではリリーフランキーのほうが福山よりモテるという話から)、福山さんの過去ってかなり“東京タワー”(『東京タワー オカンとボクと、時々、オトン』)的だなと思ってたんですよ。
福山 ああ。だから“東京タワー”を読んだときに、もちろん僕も感動して泣きましたけど、でもこれって普通の九州の話だなと思ったんですよね。
−デタラメな感じの父親がいて。
福山 そう。工場が多くて、みんな労働者だったですからね。で、当然そういう場だから、風俗があり、博打があり、それをまとめるヤクザがいて。
−自然とみんな酒飲みになり。
福山 うん。それが当たり前だとおもってたんで、アメリカ映画に黒人の貧困層が出てきたりとか、あとジョン・レノンがワーキングクラス・ヒーローがどうたらとか歌ってたりするのを見ても、なんでそんな当たり前のことをいってるんだろう、と。普通じゃんと思ってて。東京に来てからですよ、「え、日本にもそういう棲み分け的なものがあんの?」と思ったのは。自分のこと普通と思ってたら下流だった(笑)
−「え、お父さんは麻雀ばっかりやるもんじゃないの?」という(笑)
福山 そうそう、「お父さんって働いてなきゃいけないの?」って(笑)。

そういう下流出身というのが庶民派ということでプラスに作用している。
中居君の人気を見てもわかるように、日本という国は結局は金持ちよりも庶民派が好きなんだ。
で、福山らしいエピソード。

福山 (略)だから、ちょっと危ない人と紙一重なんですよね。深夜番組『おねがいマスカット』(テレ東系)でRioちゃん(AV女優)が僕の『squall』を歌ったのを観て、僕もRioちゃんのAVを観たことがある。これは付き合ってると言ってもいい、ぐらいに思いますから!
−そういう感じも信用できますよ。とりあえず、今後もそんな部分は変わらなそうというか…。
福山 治らないんですよ。全然。ちょっとは治るかなと思ったんですけど。
−50歳でもそれだといいですよね。
福山 ホントに。「彼女はいま彼氏いないと思う!だって俺の歌、歌ってたもん!」って(笑)。 

おねマスかよ。
やっぱりおねマスの話をされちゃうと味方だと思わざるえない。

まとめると
福山を参考に主に男子が同性に嫌われないようにするには
サブカル通なところを見せて一面的ではない奥行きを相手に感じさせる。
自虐的な下ネタを言うことで相手の共感を誘う。
下流出身であることを匂わせる。
この三つが重要であることがわかる。

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