只野仁 最後の劇場版

只野の劇場版を見てきた。
ドラマは1回しか見たことない。
芸術性の欠片もない洗練されていない映画である。
映画版になると途端に感動させねばと背伸びしがちな映画が多い中で、かえって
すぐセンスのない笑いに走るところに潔さを感じた。
とはいえ泣けた泣けた。
普段はさえない只野がアイドルのオシリーナの上に大きなビールの缶が落ちてくるところを
助け、何も言わずに誰にも気づかれずに立ち去るところで、なんだかもう涙が。

大手広告代理店・電王堂の総務二課係長・只野仁は、自他共に認めるダメ社員。しかし、彼には知られざるもう一つの顔があった。社内外のトラブルを解決するため会長直属の「特命係長」として暗躍しているのだ。社運をかけたイベントの開催が迫る中、メインキャラクターをつとめる人気グラビアアイドル、シルビアに脅迫状が届き、只野は護衛と身辺調査の特命を受ける。早速調査を開始するが、かつてない強敵が立ちはだかる。
という話。

赤井英和が仕事に没頭したあまり奥さんにも子供にも逃げられた男を演じていた。
その奥さんと子供がやっと5年ぶりに帰ってくると喜んでいた矢先…

男には家族のために一生懸命働くときとそれが故にその家族からの愛を失ってしまうというというジレンマがある。
「なんのために働いてたんやろな」と言う台詞に涙が。
男だったら泣かないといけない。
この映画は古き良き男性映画の流れをくんでいると思う。
お色気とカンフーという二大要素である。
お色気もセックスインザシティと違って全く必然性がないのがいい。
チェ・ホンマンが飛行機から落ちてなぜか温泉に落ちて、温泉から半裸のギャルが飛び出してくるなど。
西川史子先生のベッドシーンもエロい気持ちになるどころか爆笑を誘う。
そんなバカエロという懐かしい昔の東映にあった分野が久しぶりに蘇った映画だった。
そして、ラストではエビちゃんが昼間の情けない只野のことを大好きと言うところで、締め。
観客は只野に憧れながらも只野にはなれない自分を1時間50分あたりで自覚し始める。
しかし、昼間の情けない只野でもエビちゃんみたいな娘が惚れてくれるのだ。
もしかしたら、こんな俺でもエビちゃんみたいなOLが…
と観客の心を慰撫し、明日への活力を無理矢理掻きたててくれるのが素晴らしい。
これはエビちゃんでなくては務まらない大事な仕事である。
エビちゃんのような内面が全く見えないが性格は良さそうな人だからこそ逆に説得力があるのである。
これを蒼井優などがやったとしたら何か含みがあって観客それぞれに違う解釈が浮かんでくるからラストの爽やかさがなくなってしまう。
やはりエビちゃんの空虚な笑顔がいいのだ。
泣いて笑って久しぶりに映画というものの楽しさに触れた気がする。
映画というものはこの程度でいいのだということをこの映画は教えてくれた。