中山秀征の天才性

中山秀征という人は面白いと思うのだが、中々その面白さが伝わらない。
DAISUKIやうちくるなどの番組を楽しく見ていたくせに、ヒデちゃんは面白くないと言う人を私は信用できない。
今回、週刊文春阿川佐和子インタビューを読んでよく分かった。
ヒデちゃんは他人を輝かせることに一生懸命で、自分を面白く見せようなんてこれっぽっちも
思ってないということだ。
だから、司会が上手い割に人の番組に出ると失敗したりするのだろう。
だから、面白さが伝わりにくいのだろう。
で、以下、週刊文春の記事の引用である。

おもいっきりDON!について

阿川 どんなベテランでも冠の番組を持って仕切ることになると、パニクったり心ここにあらずというときがありますけど、ヒデさんはそれが全然感じられないからすごいなあと思って。

中山 でも、これで面白いのかという不安感とか疑問はいつも抱えてますよ。世間はこう斬るなら、じゃあ僕は逆で行ってみようかなとか。できるだけ他と同じ目線にならないようにしてますね。 

阿川 スタッフを怒ったりしますか。
 
中山 細かく言うほうではありますね。視聴率を言うのは好きじゃないから、その前にディレクターに「このネタはないだろう。何でこれをやろうと思ったの?」と聞きます。どんなくだらないもんでも、僕らがすげえ面白いと思ってるもんをやらないと伝わらないというこだわりがあるから。

阿川 おざなりな企画はダメだと。

中山「生放送の情報番組ってこういう感じじゃない?」って出してくる姿勢があまり好きじゃないんですよ。それに対して意見を交換しあいます。そうすると「そうだな」って納得してくれる人もたくさんいるんですよ。

阿川 まず自分たちが面白がる。

ヒデちゃんは意外にも作家的に番組に携わっているのだなと思った。
イメージにない話だ。
それから、「ラジかる!!」の夕方時代の話に移る。

中山 「ラジカル!!」はそもそも夕方時代の番組だったんです。

阿川 ワイドショー的な番組のメイン司会をやるのは初めてで、すごく視聴率が悪かったんですってね(笑)。

中山 ひどいときには1%台が出たんですよ。ところが、二クールの間に最高視聴率七%ぐらいまでいって、夕方の番組では過去になかったような高視聴率で終わったんです。

阿川 たった六ヶ月で!!

元々視聴率がいい番組を事務所の力で司会にしてもらっているイメージが強いヒデちゃんであるが、本当は視聴率を一から上げていく努力をしているのだ。
で、「ラジかる!!」をどういう番組にしたかったか。

中山 僕は昔、「夕やけニャンニャン」という夕方の番組をやっていて、学校から帰って来て面白い番組があったら子どもたちは絶対見る、夕方の番組には文化の発信源になるものが絶対にあると思ってた。

阿川 おニャン子クラブを生んだ番組をやった経験で。

中山 「ラジかる!!」はまずお金がない。だから、メジャーなタレントが使えない。カメラも出せない。苦肉の策で、無名だったザ・たっちを使って、天カメ(天気の定点観測用カメラ)で撮ろうとか、タカアンドトシを使おうと。それが人気が出て。金があったらあの番組からタカアンドトシもザ・たっちも生まれなかった。

阿川 へ〜え

中山 そういう策を練りながらやっていったところに、日本テレビのアナウンサーの宮崎(宣子)っていう特殊な人間がいて(笑)。あいつもアナウンサーになって四年目だったけれど、レギュラー番組も持ってなくて仕事がなくて暇だったから選ばれたんですよ。

宮崎アナの特殊性とその生かし方は、企業の問題社員を持つ上司の方にも是非参考にしていただきたい。

阿川 よく上手に磨きましたね。

中山 あいつは最初は行儀も悪くて。俺と飯を食ってる最中に携帯電話に出て、中座して三十分も四十分も帰って来ないしね。それ自体失礼なのに、もっと言やあ、お前の相談聞いてるんだよ、俺はって(笑)。

阿川 アハハハハ。

中山 でもね、それが彼女の面白さだと思ったんですよ。宮崎がちゃんとしようとすればするほど変なことがいっぱい起きてくる。

この優しさ。人類愛。立派です。
他にもキャバクラ中継やギャル曽根などを使ったこともあって、二クールやって視聴率がぐんと上がる。朝にいってもやっちゃいけないことをやる姿勢でのぞみ、「こたえてちょーだい!」というお化け番組があるのに関わらず、最終的にはそれを視聴率で越えた。宮崎アナの面白さには磨きがかかってきたようだ。ヒデちゃん的にはその面白さに最初から確信があったという。

阿川 共演者の本性を引き出すのが上手なのは何でですか?

中山 その人が使ってない、いいところがいっぱい見えるんですよ。特に「DAISUKI!」の飯島直子さんとか松本明子さんとか、「THE夜もヒッパレ」の安室奈美恵さんとか。絡む女性の一番いいところを出したくなって、すごく成長してくれて、自分も一緒に成長できたというか。

阿川 素敵! 競演しよッ!!

中山 魅力のある人って、本人はそこが魅力だと気づいてないんです。「私そこがダメなの」と思ってたりする。

飯島直子も会った初日からすごいなと思ったという。

中山 番組でバスケットの「スリー・オン・スリー」をやって、僕がゴールを決めたらあのたわわな胸を僕の顔に押しつけて抱擁してきたんですよ。(頬っぺたをムギュッと押さえて)おっぱいこの辺にありましたから。

阿川 大きかった? 

中山 デカかった(笑)それで「うわっ、この人はこういう表現をするんだ。じゃ、もっと面白いとこがいっぱいあるはずだ」と。

そして、一緒に温泉入ったり寝たりする企画を平気でやったりしてたら、癒し系で飯島直子がブレークしたと。
亡くなった飯島愛さんについては。

中山 最初はゲストを迎えて話を聞くなんて態勢じゃないですよ。ゲストに興味なきゃ全然聞いてねえし、興味のある話のときだけ延々話出して、周りをキョトンとさせるし(笑)。それが彼女の面白さなんだけど。

阿川 しっかり番組を回すヒデちゃんとマイペースの愛ちゃんのバランスがよかったですよね。

「ウチくる」の新しいパートナーは久保純子に決まったわけだが、ヒデちゃんの推薦らしい。

中山 そうです。愛ちゃんが引退を発表して辞める二本前のゲストが久保純子さんだったんです。実際に絡んでみたらすごくいい感触で面白かったから、スタッフと一緒に話し合って彼女に決めました。

阿川 意外な人選ですよね。
 
中川 みんな色気があってツッコミができてっていうポスト愛ちゃんを探すんだけど、飯島愛以上の飯島愛はいないんですよ。それを求めたら絶対負ける。久保さんは真反対で、振り幅が大きいからいいと思ったんです
 〈中略〉
中山 できる人なのに「あたしなんて」と思ってるところが、やればやるほど面白くなるんですよ。

阿川 いいなあ。仕事のパートナーにヒデちゃんみたいな人がいたら幸せだろうなあ。

中山 僕も阿川さんとお仕事したいですよ。本番中に厳しく叱ってほしいですね(笑)。

阿川 叱り役かい(笑)。

阿川さんをパートナーにするとしたら叱り役か。そんな番組も観てみたいものだ。
ヒデちゃんはなぜ、そうやって人を輝かせようと決意したのか。

中山 僕は若いときに上岡龍太郎師匠とか(島田)紳助さんのアシスタント的な司会をけっこうやって、先輩にいいトスを上げるのを勉強させてもらったんだと思うんですよ。先輩のパターンを覚えて、上岡さんはここでこう言ったら喋りやすくなるはずだとか。

阿川 ほお。

中山 だから、今でもトス上げるのが好き。一番いいトスを見事に上げて見せようというのはありますね

ヒデちゃんはサッカーで言うとボランチみたいだな。あっだから、ヒデちゃんと言うのか。
で、最終目標。

中山 歌があってトークがあってお芝居があってキラキラしているエンターテイメントショーの番組。僕が子どもの頃、テレビを観て輝いてるなって思ったようなのをやりたいです。それが僕の最終形かもしれないですね

そんなヒデちゃんに、いつもは辛口の阿川佐和子も一筆御礼で絶賛。

以前、「ヒデちゃんの素晴らしさは、人をいやな気持ちにさせないこと」と評された理由がよくわかる。共演者に確実なトスを上げ、自分が目立つこと以前に相手の面白さを引き出して、そして番組全体の魅力に貢献する。
でもただの謙虚ってわけでもないのよね。この不景気を吹っ飛ばし、いつか「中山ヒデショー」がスタートすることを楽しみにしています。バアサンアシスタントはいらんかえ?

このインタビューは大変よかった。
中山秀征というお笑いの世界でも過小評価されがちな人をなんの偏見もない阿川佐和子という人が気負いなくインタビューしたことがよかったのだろう。
個人的にはただ司会が面白い人だと思っていたが、番組制作過程からの舵取りにも関わり低視聴率番組を人気番組へと変えていった中山秀征の手腕には驚かされた。
次から次へと共演者を輝かせるその人間を肯定しようという姿勢にも感化された。
まさに中山秀征はテレビ界の「静かなるドン」と言っても過言ではないだろう。