日本語の作文技術

日本語の作文技術 (朝日文庫)

日本語の作文技術 (朝日文庫)

本多勝一の名著中の名著。
3回買い求めそのたびになくしちゃいましたが、また買いなおしました。
本多勝一と聞いてなんだ左翼の人かと思ってしまった人は損です。私も本多勝一の思想には全く共感しませんが、これは役に立ちます。
100ページも読めば文章が上手くなります。
句読点の打ち方も明確に分かるようになります。
句読点の打ち方にもちゃんとしたルールがあるのです。それがこの本には書いてあります。今まで教わってきた学校教育はなんだったのでしょう。

例えば
悪文1
私は小林が中村が鈴木が死んだ現場にいたと証言したと思った。
修飾語と非修飾語が離れすぎている。
こう変えます。
鈴木が死んだ現場に中村がいたと小林が証言したのかと私は思った。

悪文2
早くライトを消して止まらずに走る。
ライトを早く消すのか早く走るのか分からない。
節を先に、句をあとにというルールから。
「ライトを消して止まらず早く走る」と直せます。

悪文3
チリ美人は、アルゼンチンの肉をたっぷり食べているセニョリータにくらべると、ぐっと小柄である。
長い修飾語ほど先に、短いほどあとにというルールから。
「アルゼンチンの肉をたっぷり食べているセニョリータに比べると、チリ美人はぐっと小柄である。」
と直せます。

このような分かりやすいルールが出てきますが、この本は専門家から指摘を受けないようにいろいろと註が出てきます。そういう註は読み飛ばし、ルールを理解しながら読めばいいと思います。

第8章の「無神経な文」の例文は本当に読んでて嫌なので笑えます。
「(前略)八月十三日の夜行、京都発富山行3号に乗ったときのことです。満員で座席などとれないことは承知の上で、けれど、通路ぐらいは、と思っていたのです。ところが、ムッ、ムッ。ジローッ周囲を見回すと山男の群れ。しかたなく立って眠る?ことにしました。毎日アクビの出るクセは、その夜は一層ひどくて五分ごとにアクビが出て、疲れて眠くても、とても眠れそうもありませんでした。そこで私は、カカトの高いピンクのサンダルを脱いだり履いたり。これを見ていた一人の優しい優しい山男が、私のアクビと足にたまりかねて席を譲って下さったのです。図々しくも「スイマセン」と席を代わってもらうや否や、グーッと眠り込んでしまったのです。鼻ちょうちんぶら下げて、席を譲って下さったお方をチラリチラリ見ながら…。ああ、なんと山男は親切なるぞ。でもほほがこけて細い人、あんな狭い所に何度も寝返りしながら、つらそうにお眠りあそばしてZZZ(後略)『山と渓谷』1974年12月号」

この文章が面白くないのは、自分が笑ってしまっているからだという。上手い落語家は自分では絶対に笑わない。真面目な顔で演じてみせる。それと同じように文章も自分が笑ってはいけないのだという。
なるほど。私も気をつけねば。