かもめ食堂

かもめ食堂」をリバイバル上映で。200人くらいのキャパに7割くらいの入り。土曜とはいえかなり混んでいる。
客は年齢層が高く中年の夫婦が多かった。
フィンランドで「かもめ食堂」を経営している小林聡美の元へ片桐はいりもたいまさこがやってきて一緒に働くという話。
かもめ食堂はまったく客がこない。
普通ならそこでメニューの工夫やら宣伝作戦を考えて
大成功という話になるだろう。
しかし、この映画はそういう種類の映画ではなく、
かもめ食堂という場所に集まった人たちのちょっとした
エピソードが中心に描かれる。
映画の中で合気道の呼吸法や水中ヨガを小林聡美が一人でしている場面がある。
合気道の呼吸も水中ヨガも自然治癒能力を上げることによって
体と心のバランスを保つものである。
小林聡美は日本人観光客向けの集客のための努力をせずに
地域の中に溶け込み、日本食そのものとしてのよさをわかってほしいと思っている。
日本食をアレンジせず日本食そのものの魅力で真っ向勝負する
というのは合気道やヨガの考え方と同じである。
そんな自然派のキャラクターを小林聡美が肩の力を抜いて演じている。上手いとも思わせないなんて非常に上手い俳優だなと思った。
もたいまさこの顔芸はリアクションが写るだけで場内に爆笑を引き起こす。
なんともしれない味のある顔が素晴らしい。
片桐はいりの男性不信で変に力が入った感じと体形とかこういう人が実際にいるような錯覚にとらわれた。
この人も自転車をこいでいる感じとかそこはかとなく可笑しい。
そのそことなく可笑しい雰囲気が前編を貫いていて心地よい。何よりも卵焼き、肉じゃが、おにぎり、シナモンロールなど登場する食べ物がことごとく旨そうなのがいい。料理が旨そうなだけでその映画は観る価値があるといえる。
かもめ食堂に行ってみたいと思った。
こういう地域の食堂を守らねばならないと思った。
保守文化人で「守るべきものは近所のそば屋」と言った
福田恒存が生きていてこの映画を観たらきっと喜ぶことであろう。

かもめ食堂 [DVD]

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