TAKESHIS’は大傑作

世間では賛否両論で否のほうが多いかものTAKESHIS’ですが、見に行ってきました。
★★★★★。面白かった。素晴らしかった。
まず、ストーリーがない。なのでストーリーがない映画が嫌いな人は見ちゃうと駄目でしょう。
この映画は夢なんですね。一言で言うと。武の。
北野武がカミさんうぜえ、殺してえという願望をはっきり描いているのがすごい。恐ろしいです。カミさん役はカミさん本人が演じるわけにいかないので、岸本加世子が演じていて、いちいち主人公のやることを邪魔しに来ます。夢ってそういうものでしょう。嫌いな奴が出てきて自分のやることをいちいち邪魔するという。で、岸本加世子を銃で殺しちゃう。で、やくざもなにもかも殺しちゃう。銀行強盗もやっちゃう。
夢というのは願望が現れるからその願望をストレートに描いています。そこが見ていて気持ちいいですね。
で、愛人とセックスしてえ願望というのも、京野ことみが愛人役で出てきてセックスするので満たされます。
自分がカミさんを殺したくて愛人とセックスしたいというのをこんなにストレートに映画にしていいのだろうか。
あとは、悪夢のようにデブの二人組が出てきたり、美輪さんが出てきて歌ったり、美輪さんは昔の髪型でヨイトマケを歌ったりしています。
美輪さんと美輪さんお気に入りの木村さんが仲がいいとかそういうところを見て楽しんだりもできますね。楽屋落ちというか外国の人誰も知らないよ。そんなこと。
変な毒虫が出てきたり、なんか頑固なラーメン屋が気になったり、なんだか日常を再構成してしつこく繰り返したような映像が続きます。なんでこんな夢を見たのかわからないような、こんなことを意識していたのかという。やっぱりそこも夢みたいです。
あと、二人のたけしが出てくるというのも武の不安感ですね。もし自分がスターではなくてうだつの上がらないコンビニの店員だったらどうしようということですね。
不安も夢によく出てきますよね。京野ことみにしつこくバカにされたり、京野が突然自分の元を去って違う男の元へと行ったり。とか。
私もよく見ますね。好きな女が他の男とイチャイチャしているところとか。
この映画でも繰り返しその場面が描かれます。
同じ俳優が複数の役を演じているという特徴をこの映画は持っているのですが、それも夢の特徴ですね。
キムタクが同級生という設定の夢を私は見たことがあるし、自分が有名人だという設定の夢も見たことがあるし、夢の中で嫌いな奴はいろんな役で登場するのも見たことあります。
すべては夢です。
夢で逢いましょうも劇中に流れる親切設計。これで分からなくてはいけません。
たけしが繰り返し銃を撃ちますが、これはね。永山則夫って皆さんはしらないだろうけど、四人ぐらい殺した連続射殺犯がいるのだけれど、その人とたけしはバイト先が同じだったという経験を持っているのです。たけしも大学を自分からドロップアウトして今でいうフリーターみたいな事をしていたわけで、もしかしたら自分も永山になっていたかもという気持ちはあるんじゃないでしょうか。
という風に内なる欲望、不安をぶちまけ、個人的になんか気になることを偏執的に映像にしたこの映画は素晴らしい。

もうね。これは大傑作ですよ。何十年も残る映画です。
意外と名作映画は公開時の評判が悪かったりするものです。
だが、そういう映画の真価は時間が経ってから判明するものです。この映画はそのたぐいの映画です。