知的複眼思考法

刈谷剛彦「知的複眼思考法」講談社プラスアルファ文庫
を読む。すごい難しそうな本ですが、一日で一気に読めちゃいました。
今から10年くらいの前の本だが面白い。
ステレオタイプな考え方を疑って自分で考えるための本です。
具体例は主に教育問題から取られていて分かりやすいです。
こういうロジカルシンキングの本は経営についての具体例が挙げられていることが多いので学生にとっては分かりにくいと思います。この本は誰もが興味のある教育問題を扱っているので一般の人が読んでも分かりやすいと思います。
常識的な考え方、ステレオタイプな考え方を疑うのですが。
こんな感じです。
「エリート校の出身者は、幼いときから過酷な受験競争を勝ち抜いてきている。そして、競争の過程で、他人を蹴落としてくる。したがって、友達をつくるのがうまくない」
「冷たいエリート」とかをすぐ連想するいかにもステレオタイプな考え方です。
実はエリート校の出身者は経済的にも文化的にも豊かな家庭や地域環境で育ってきているので人との関係のもちかたが巧みなのだとか。

「日本は学歴社会だからいじめ不登校が起こる」というステレオタイプ
もっと学歴社会の韓国と比べてみる。

この本が書かれていた当時の女子大生の就職難に関しては
女性差別が根強く残っている」というステレオタイプ
大卒の女性が増加する割合が企業の雇用以上に増えている。
逆に企業は女性を受け入れているとも言える。

ほかには関係性のなかでものを考えるという方法を紹介しています。
たとえば貨幣はそれ自体に価値はない。ただの紙である。
経済的な関係性の中で価値が出てくるものである。
同じように人の「やる気」やる気は目に見えない。しかし、あの人はやる気がないとかすぐ言う。その人の持ち物のように言う。
だが、その人もいっぺん違う部署に移ると仕事をバリバリやるようになったり趣味には熱中したりすることもある。

逆説に注目する。
皮肉な結果や意外な結果にいたるプロセスが分かる。

たとえば昔は中学校で補習授業を行っていた。
→受験教育批判→補習授業がなくなる→塾の繁栄
中学の補習をなくしたことで受験教育がいっそう強まるという皮肉な結果になってしまった。

他には就職協定。企業による有名大学を優遇した就職差別をなくそうとした。
結果として有名大学のOBリクルーターが就職を斡旋するようになる。
結果として就職協定のせいで有名でない大学の生徒は就職しづらくなってしまった。就職差別が強化される。

という風に具体例をたっぷり入っていて物事を単純化して考えそうになる私達の頭を柔らかくしてくれる本です。
論文を書きたいとかロジカルシンキングを身につけたい人は特におススメしますが他の人もぜひ読んでいただきたい本です。
高校生の小論文にも役に立つと思います。