フラガール

フラガール観ました。
これは必見。素晴らしい。
福島の常磐ハワイアンセンターが出来るまでの話。
炭鉱夫の娘達がフラダンスを東京から来た名門ダンス劇団出身の先生に習い始めプロのダンサーになる話です。
観る前「Shall We ダンス?」と「スウィングガールズ」のバッタもんだろと思っていました。
下手な寄せ集めの娘達が最後完璧な踊りを見せる話だろと。
ところが、先行作品を手本にしながら決してパクリと言わせない。リトルダンサーという映画があって、主人公が父親にバレエを認めさせるために父親の前で叩きつけるようにダンスを踊るシーンがあります。
この映画にもシチュエーションが似たところがあります。
しかし、似せないように努力しています。一つ場面の要素を付け足すのですね。

最初はお気楽なコメディ映画かと思っていました。コメディ部分はあまりよくない気も。この種のコメディにはないと思っていた「暴力」「別れ」「死」が途中から出てきてからは涙腺が決壊しもうダメでした。
そのハードなところが今までの映画と一線を画していると思います。
まあ、それだけではなく俳優が素晴らしい。
この映画は蒼井優松雪泰子に尽きるような気がしてきました。
松雪はやっぱりキレイでクールな都会人で田舎をバカにしていたけれど途中から段々娘達のフラダンスにかける情熱にほだされて彼女達を勇気づける。
という予想通りの展開の中にいます。
しかし、それが漫画的にならず、生きている人間として存在感を持っているのは松雪泰子の演技力のおかげだと思います。
プラスチックのような肌の質感、声の良さ、ダンスの上手さ、ツンとデレの表情の巧みさ。
この人しかいないと思える正真正銘のかっこよさです。
松雪のはクールとホットの二元論演技でそれが大人の女のよさだと思います。
一方蒼井優です。
私は蒼井が方言で大声を出すだけでご飯何杯でもいける、
というか反射的に泣いてしまう男です。
男たちの大和」もそこが一番の見せ場でしたね。
この映画も大声で方言というツボを外さないシーンもあります。それだけで入場料の価値があるというものです。
ところが蒼井は段々それを越えていきます。
蒼井が大声で抗議するのはなぜかがこの映画を最後まで見ていると分かってきます。
蒼井という人は思春期の不機嫌さ不安定さを演じさせると
右に出るものがいない人ですね。
蒼井優とはよく言ったもので、青春の優れたところ。
蒼井=「青い」優=「優れた」
なんですね。若さゆえの青さの優れた点、そんなのをあの美人だか不美人だかよく分からないこれまた「微妙」なルックスで表現するのです。
「不安定さ」「微妙さ」「難しい時期」「多感な時期」
いろいろ入り混じってて、それが一気に爆発すると大声になって抗議するのですね。
で、そんな時期は心が怒りのほうに振れても喜びのほうに振れても過剰なのですね。
喜びの方では生きる喜びがダンスシーンの笑顔に溢れていて、涙が止まりませんでした。
結局蒼井の喜怒哀楽すべてで泣きたくなります。
生まれてきてくれてありがとう。
演出がどうこうとか小賢しいことはそんなことはどうでもよくなりました。素晴らしいの一言です。
松雪の大人の二元論演技と蒼井の二元論に行き着くまでの思春期の微妙なグラデーションというかいろんなものが混ざり合った演技。
若いことの素晴らしさとそして何かを失っていくことで得られる美しさの対比が印象的でした。
とにかく松雪と蒼井を見るために劇場に足を運ぶべきです。
この映画は観客の圧倒的支持と批評家のそれほどでもないじゃないよ評を受けているようです。
しかし今度ばかりは観客が正しい。
とにかく損はさせないから観るべきです。
松雪と蒼井は必ずや賞に絡んでくること間違いなしです。
蒼井はこれからどうなるか分かりません。
しかし松雪の代表作となることは確かです。
二人の女優の資質のよさ年齢的なタイミングの良さが最大限発揮された稀有な映画だと思います

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