マッチポイント

マッチポイント観てきました。
テニスプレイヤーだった主人公がイギリス有数の上流階級の子息相手のテニスコーチになり、その妹と恋仲になりやがて結婚。
しかし、その金持ちのフィアンセに惹かれてしまい
という話。
主人公が金持ちのフィアンセのスカーレット・ヨハンソンと密会するのです。その場面に観ているこっちがドキドキしてしまう。
臨場感がある。
この映画はなるべく台詞以外の音を消している。
主人公と不倫相手とかその周りの人たちという狭いサークルの中に観客もいるような効果となってそれが現れる。
なんだか主人公の胸の鼓動が聞こえてくるようなそんな静かさ。そして台詞のクリアーな音。
観客の心に台詞がダイレクトに響いてきます。
不倫にドキドキ、そして後半の事件にドキドキ。
かなり心臓に悪い映画でした。
かなり、おそろしい。
人がたくさん死んだり、爆発したりしなくともサスペンスになるのですね。

主人公はドストエフスキー罪と罰を読んでいて、途中でドストエフスキー入門に変えて、上流階級に話をあわせることで食い込んでいくわけです。
運不運や偶然によって人間の運命が簡単に変わっていくさまを描いた映画です。
主人公がスカーレット・ヨハンソンと会おうとすると会えないが、偶然会ってしまう。そして偶然会いたいと思っていたときに再会したり、会いたくないところでまた偶然の出会いがという風に偶然の神によって翻弄されます。
恋愛というものは特に偶然によって、翻弄されるものです。
そして、その偶然による運不運というものの存在を主人公とスカーレット・ヨハンソンは信じている。
貧しい生まれの二人は信じている。
他の金持ちの人たちは信じていません。
金持ちに生まれた人はもともと恵まれた環境にいるから、運不運などのことを考えなくてもいいからです。
そして、主人公は理性によって出世の階段を登ろうとします。
だが、愛欲に溺れて、理性を失いそうになります。
この主人公、外見的にかなり理性や野心でのしていこうと気概がありそうに見えます。内実は全く優柔不断で奥さんとスカーレット・ヨハンソンの間に引き裂かれ、揺れ動いています。
スカーレット・ヨハンソンの半開きのエロい唇が観客にまあ、その気持ちも分からんではないなと思わせます。実は時間も短くそれほど露出度も高くないのにシチュエーションとスカーレット・ヨハンソンの魅力のせいでセックスシーンが官能的に見えます。
一方ピンクパンサーにも出てきた奥さんはいかにもインテリという感じ。ピンクパンサーに出ていたときはセルフレームのメガネをかけていました。いかにもメガネが似合いそうな目と目の間隔が短い家柄の良さそうでしかも性格もいい女性。
家柄の良さゆえに全く主人公の浮気に気づかない鈍感さも兼ね備えています。
その奥さんとスカーレット・ヨハンソンの間をテニスボールがいったりきたりしているように主人公の心が揺れ、ある事件になります。
その結末は、ネットの上部にあたりどっちに落ちるか分からないテニスボールのように観客は作者にゆだねるしかないでしょう。
あのラストは賛否両論です。私は素晴らしいと思いました。偶然で決まる運不運をテーマにしている以上、どういうラストになるにしても監督の思惑に合わせるしかないと私は思います。
私としてはこの映画は今年のベストワンに選ばれてもおかしくない映画だと思います。
以下ネタバレ







この映画は妊娠がテーマになっている。
妊娠という行為自体も偶然性のたまものであり。
人間の生も死も偶然だといいたげです。
主人公は最後ハッピーライフという言葉に祝福されるのに
まったく幸せそうでない。
十字架を背負っていきていくのだ。