物語と食べ物

「汚れた舌」だが、今回は伏線を張る回であまり動きはなかった。だが、食べ物がまた出てきた。今回は肉まん、お茶漬け、加賀野菜など。映画でも食事のシーンがある映画はいい映画であることが多い。登場人物が何を食べている人か?ということはその人がどういう人間かということを判断するのに大事なファクターを占めているからだ。「カリオストロの城」での次元とルパンのスパゲッティーの取り合いは美味しそう。「ジョゼと虎と魚たち」に出てくる卵焼き美味しそう。
小説では川上弘美の「センセイの鞄」に出てくる酒のおつまみは美味しそうだ。だが、この小説、食べ物の名詞が出てくるだけで描写が無いから、いい小説だと思うけどただ美味しそうなものを並べただけじゃないか?と思ってしまう。
「汚れた舌」の食べ物には必然性がある。前回はうどんが出てきて藤竜也が一流の陶芸家にも関わらず、高い器にうどんを入れ飯島直子に食べさせる。飯島直子はその心遣いに惚れてしまう。レストランで牡蠣をすする藤竜也。性に貪欲な男のメタファー。いやらしい。
大きな梅干しとお茶だけでお茶漬けを作り食べる飯島直子。寂しい女。森口瑤子は風邪を引いた時、亡くなった父親は肉まんを買ってきてくれたと言う。死ぬ間際の父親に森口は肉まんを持っていったが父親は弱ってて食べられなかった。父親を思いだし土手で肉まんを食べる森口。安くてだけど温かい。貧乏な家庭を象徴する肉まん。
加賀野菜を加藤浩次に振る舞う飯島。加賀野菜は金沢から東京へと。逆に東京から金沢へと向かう飯島直子の母、松原智恵子。松原は八百屋で加賀野菜を切った包丁を盗み、藤竜也を殺すために家に向かう。野菜からつながる物語。
汚れた舌に隠されたテーマ、実は舌は言葉を話す道具であるとともに味覚を感じる道具であるということ。だから、食べ物が頻繁に出てくる。食べ物が人と人との関係性を象徴する。このドラマを鑑賞するに当たって見るべきものは食べ物だ。このドラマは食べ物という物をテーマに選んだ最高傑作ではないだろうか?一つ一つのシーンの食べ物に目をこらさなくてはならない。


山田太一ドラマをビデオに撮ったので「Shall we ダンス?」を見ながら「タイガー&ドラゴン」を見る。「ダンス」はいきなり登場人物が独白始めたり、ちょっと長いかなと思ったり。演出がしょぼい所があるけれど、それを補ってあまりある役所広司の演技と脚本のドラマ性はすごいと思う。やはり傑作だ。何度見ても泣いてしまう。全く忘れていたシーン。
Shall we ダンス?
杉山さん
には泣かされた。西武池袋線のわびしさというものがいい。チャリンコもいい。外人にはわかるまい。小雨の中、変なギプスをつけて一人で踊る役所いいですね。チャリンコの横移動はキッズリターンの走るシーンを思い出させた。
いい映画の条件、食べ物、雨、横移動、この三つは押さえてもらいたい。どんどん増やしていってそれだけで映画を作りたいな。


タイガー&ドラゴン」今回も見ていて楽しかった。権助提灯ですか。権助が増えていくのがうまいよね。提灯の代わりにカーナビですか。今回は八割笑い二割泣きという感じで案配もちょうどいいんじゃないでしょうか。来週は清水ミチコも出ますね。清水ミチコ好きですね。あの表舞台に立ちながら放送作家的な所好きだな。友近も同じにおいがするから好きなんだろうね。蕎麦屋尾美としのり、大林映画と人格違いすぎるんですけど。これって西田敏行のベストワークじゃないか?鶴瓶もよかった。銀粉蝶もいいしキャスティング満点じゃないか。なんで中年の気持ちもわかるのだろう。クドカンは。森下愛子いい年の取り方してるな。かわいらしい。これなら組長が30年愛し続けるのも分かる。やっぱり浅田美代子よりは森下愛子を選ぶな。吉田拓郎は正しい。食べ物としては水炊きが登場しましたね。
中年の恋愛を描きながらここまで私が夢中になれるのもいい。「ダンス」も中年の恋愛だ。どちらもプラトニックだな。どちらも中年のプラトニックな愛を描いていて、これだけ支持されるのが素晴らしい。
Shall We ダンス? (通常版) [DVD]