東京奇譚集

★★★★☆
村上春樹の新作。
おつまみとかおやつといった感じでサクサク読めます。

偶然の恋人
これは大人の恋ですね。
切なさが入ってます。素直にええ話やと思ってしまいます。
これはいい小説です。
偶然をテーマにした小説ですが、まあこういう話はあるよねと納得してしまいました。

ハナレイ・ベイ
出てくる若者の話し方が今風なので笑ってしまいました。
こういう奴、いそうだなあと。
これも切なさを導入してありますね。
例の親子愛がテーマですね。例の本に比べると淡いものではありますが。
一応、偶然がありますが、まあこのくらいの偶然ならあり得ます。
主人公が若者に向けて女の子にもてる秘訣を言うのですが、それが勉強になります。

どこであれそれが見つかりそうな場所で
これは好きじゃないですね。ねじまき鳥みたいです。
少女が出てきて主人公と話したりして。
なんだかなあと言った感じ。
ラストのわからなさもねじまき鳥っぽいです。

日々移動する腎臓の形をした石
これも切ないですね。これが恋愛です。偶然もあり。
最後女の人の職業が明らかになるのですが、これは男女間の恋愛が文字通り××××だというのと掛けてるんでしょうかね。
「男が一生に出会う中で、本当に意味を持つ女は三人しかいない。それより、多くもないし少なくともない」という父親の言葉に縛られてしまった主人公の話です。
こういうもっともらしい格言って信じてしまいそうですね。

品川猿
これは本当に品川猿が出てくるのですが、おとぎ話ではこういう話はあり得るのですから、こういう現代小説があってもいいでしょうね。ミステリーっぽい作品ですね。
名前というのが人間にとってどれだけ大事かということも書いてあります。東京タワーも実はそのことを最後に語っていました。私は姓名判断とか好きなので、ちょっと信じてしまいます。

マイミクの方がこの本は怖いと言ってましたが、確かに怖いのは偶然によって左右されて、主人公達が自分の意志で行動しているように見える人間が一人もいないからでしょうね。
運命に翻弄されてそれも抗うのも無意味だと悟りきっているような、そんな風に見えます。だから怖いのでしょうか。
で、運命というのはなんというか変なところで繋がっていたりそれが自分にとっていいのか悪いのか分からなかったりするから怖いのかもしれません
怖いだけではなく、一歩間違ったら通俗的な男女間や人間同士の切なさを導入しているのでそこに惹かれる読者も多いでしょう。