博士の愛した数式映画版

博士の愛した数式ですが、昨日の日記に書いた有頂天ホテルとまったく逆の映画でした。★★★★☆。
一言であらわすと「安心」。
そんな映画でした。
「博士」で見るべきものはまずは深津絵里の演技です。
博士の行動に戸惑う、戸惑っている以外の何者でもない深津。
家政婦紹介所に抗議する、善良ではあるが、正義感が強く不正に対しては黙っていられず口を尖らせる「踊る」の恩田すみれみたいな家政婦の深津。
息子に褒められて照れる深津。
全部、どっかで見た深津だ。予想通りの演技。まったく観客の期待を裏切らない。安心。
子役の演技。
今のドラマに出ている子役は演技がうますぎでリアルで、電車に乗っているときに、ランドセルをしょった子供の話を横から聞いているような気になる。
だが、この映画に出てくる子役は昔の子役だ。棒読みみたいな変なせりふまわし。安心。
ひたすらきれいな日本の景色、自然。安心。

この映画を見る前に原作を読んだのだが、博士の愛した数式というだけあって数式が出てくる。文章で数式を説明するのは簡単だが、映画ではどうやって説明するのかなと思っていた。
途中で説明画面を挿入するのかなあと思っていた。
だが、前作を見た限りこの監督はそういうのは嫌いだろうからどうやるのかと思ったら、深津絵里の息子のルートが大人になって数学の先生として出てきて教壇に立って、生徒にこれから僕がどうして数学が好きになったのか言おうと、本編に数式が出てくるたびに、全部黒板に数式とか数学用語を書いたフリップを貼り付けていちいち説明してくれる。親切。安心。
なんか教育テレビのお兄さんみたいだ。
ナレーションで博士との過去を語るわけだ。分かりやすい映画手法。
原作には出てこない義理の姉と博士の関係も全部浅岡ルリ子が語ってくれるので分かりやすい。
ということで、ホテルの中ばかり撮っている有頂天ホテルと違って自然を写した画像はきれいだ。数式も人間関係も俳優の演技もわかりやすくていい。
私は映画の中に出てくる日本の美しい自然が好きだ。
本当の自然なんかは少し車で走れば触れることが出来るし、別に好きではない。だけど映画に出てくる日本の自然は見ていて飽きないし楽しい。物事はフィルムに焼き付けたほうが現実の姿より美しいのだ。
有頂天ホテルはせりふはギチギチに詰まられるだけ詰めていたがこの映画は最小限のせりふで出来ている。ドラマ性の無さもきれいな自然を背景にすることで飽きさせない。
ラストも原作を敷衍しアンチクライマックスというか過度の泣かせに走ることなく、淡々と終わっていきます。
この映画の終わりって、「×××××・以下略」という映画と同じですね。やはり、××××××××をやっているところを映画で見ると泣けますね。

言っとくけど良い映画だと思うし褒めてるからね。