間宮兄弟 映画

間宮兄弟の映画を観てモテ非モテについて考える。
あらすじ
間宮兄弟を演じているのは兄佐々木蔵之介、弟ドランクドラゴン塚地です。間宮兄弟ビデオ屋の店員沢尻エリカと小学校の教員の常盤貴子をホームパーティーに招くという話。


ホームパーティーでモノポリーをするのですが、それが本当に楽しそうです。沢尻エリカの演技が自然すぎます。多分実際にモノポリーで遊んでみてそれから撮影したに違いありません。
沢尻エリカはかわいいですね。ビデオ屋の店員にはとても見えません。沢尻という人は清純派でいい人の役が多いですが、この映画のように悪い女ともいい人ともいい切れない等身大の最近の子を演じるのもいいと思います。野球に熱中している彼氏と普通に付き合っていてHと洗濯のときしか呼び出さない彼氏に不満を持っています。
沢尻は根は悪い人だという噂なのでこういう悪の含有量が少しある役もいいのでは。
常盤貴子ははじめて良いと思いました。常盤貴子は人見知りが激しくて、一度打ち解けたはずなのに次に会うと恥ずかしがってなんだか会話がかみ合わないという私の周りでもよく見かけるタイプの女の人を演じていました。
ド近眼でここぞというときは眼鏡をはずしたりする女性です。シャイなのに自分の体には自信があり肩を露出した服を着るという性格。これもいそうです。
常盤はベランダでタバコを吸いますが眼鏡でタバコの煙を吐き出す姿は杉村春子先生みたいでかっこいいです。
左肩に編み下げをたらしていて首を露出しているのですが、この髪型はうなじと首がきれいな人なので似合っています。
佐々木は体の関節がよく鳴る人です。いまいち女性に積極的になれません。常盤貴子が肩を出しただけでジロジロ観てしまう挙動不審な人。こういう男はモテませんね。
佐々木の同僚の高嶋政伸はとにかく声がでかくどんなひどいことを言われてもニコニコしていて佐々木の両肩をドンと叩きいつも佐々木の関節を鳴らしたりしています。
塚地は文学的な言辞を恥ずかしげもなく吐く感傷的な男です。
という風に俳優がパブリックイメージとちょっとずれた役をやっているところが面白い。ちゃんと全員いそうだし。脇役の演技も観ているだけで笑えます。


全編にちりばめられた笑いもちゃんと機能していると思います。
森田芳光らしい意味ありげでなんの意味もないという映画技法もところどころにありますが、それほど気にならない。
メッセージ性を除いても映画としてよく出来ていると思います。
で、この映画を観て、モテということに目を配っているなと私は思いました。
間宮兄弟はモテないという設定です。決してモテないのはこの兄弟が女性の気持ちを考えていないわけではなく逆に女性の気持ちを考えすぎて二人で反省会を開いたりとしているところがモテない原因ではないか。女性心理をつかもうと努力しているが結果を伴っていない。
これがよく現れているシーンが塚地が好きな女の人に会いに行くのに香水をつけすぎて不審がられるシーン。
香水は相手のためにつけるものなのに相手に嫌われる原因の一つになってしまうという皮肉。
という風に間宮兄弟は女性の気持ちをいろいろ考えすぎて失敗してしまいます。それに女性の心理を考えるべきところを考えなかったりもしている。
で、対照的にモテている男はデリカシーのかけらもない失礼な男たちであって沢尻エリカの彼氏とか高嶋政伸とかです。
モテていてもモテなくても女性心理の分からなさは同じで相手の気持ちを考えようと努力している間宮兄弟はモテなくて全く気にしない独善的な男はモテています。
まあこれもよくあることじゃないですかね。相手の気持ちを考えようとオドオドしていたらモテないですからね。逆に相手のことを考えない自信たっぷりな男がモテたりしてますよね。
この映画の素晴らしいところはその二項対立で終わらずに女性の心理を分かりつつモテているという成功例を出しているところだと思います。
それが沢尻の妹の彼氏、玉木ですね。
沢尻の妹の彼氏は外見は奇抜な格好をしていて眉毛もなく見るからに頭が悪そうな設定ですが、実は頭が良くてフランス語もペラペラです。
沢尻の妹(北川景子)も浴衣なのにあぐらをかいたりいつも小さいハリセンを持ち歩きその彼氏の頭を叩くというあほっぽいキャラクター。
しかし、そんな馬鹿そうな北川は間宮兄弟の心根の良さを一番分かっている。一番人間の本質を理解している。
そして玉木も北川に頭を小ハリセンで叩かれてうれしそうにニヤニヤ笑っています。あえて下手に出ているのです。
デリカシーのないモテ男にもなりたくないしかといってモテない男にもなりたくない賢い男はあえてバカを装い下手に出るのです。
それが一番利口なやり方なのです。
北川は間宮兄弟のすべてを見透かしたようなせりふを言ったりと見た目とは逆に賢い娘です。
北川とその彼氏の玉木が一番バカそうに見えて本当は賢いカップルだったのです。
このカップルは一番年下ですが一番中身は大人です。
そのギャップが面白い。
ことに恋愛において賢さは年齢と関係ありません。
そのことをさりげなく証明しているのです。
そんな真理はそれはそれとして間宮兄弟のように女性心理を掴もうと努力し優しくていい人だけどモテない人を分かってくれる人が絶対にいる。がんばれば誰か見ててくれるというのは慶賀の至りではありませんか。
そんな感じでジーンとして映画館を後にしました。