最近読んだ本雑誌漫画


最近読んだ本。
吾輩は主婦である(下)」シナリオ本 宮藤官九郎
(上)では人はなぜおばさんになっていくのかを考察していました。
このシナリオは夏目漱石が現代の主婦の体に乗り移るという話です。
おばさんになることでおじさん⇔おばさんの違いとか男と女の違いを考えるのです。
今までは「転校生」とか思春期の男女が入れ替わることで性の違いについて考えるという話はありました。
この本の場合は主人公をおばさんの体を持ったおじさんにすることでおばさんというものの生態について考えました。
(下)ではそういう色は薄くなり小説家となった主婦がどういう生活を送るかという話です。
出版界や小説をめぐる環境について考えています。
すごくリアルですね。ダ・ヴィンチ(このシナリオの中ではレオナルドとなっています)という雑誌で取り上げられるとどのくらい部数がいくかとかそういうことにも言及しています。
そして、何も書きたいことがないのに書かなければいけないときはとか。宮藤自身が感じているであろうことを吐露したりしています。
とはいえ、そんな難しい話ではなく完全な喜劇です。
かなり読んでて笑いました。
ちなみにこれのドラマ版では主人公の書生になる人気作家役に
高橋一生という宮藤そっくりの俳優が演じています。
これは松尾スズキと宮藤の関係と似ていますね。
弟子のほうが人気作家だという。
セルフパロディでしょうか。

「悪の読書術」福田和也
これはどういう本を読めば人に賢そうに見られるのかを
書いてあります。
エッセイは須賀敦子とか白洲正子の本を読めばいいらしい。
同時にざっくりと現代作家を語ったりしています。
まあ、この本は著者特有の作家にたいする悪口に乗れるか乗れないかで決まる本ではないかと。
最近は人がどういう本を読んでいるかでその人がどういう人かを判断されるということはあまりないですよね。いい意味でも悪い意味でもスノビズムが廃れてきたというか。私は判断しますけど。ちょっとそういうところに意識的になったほうがいいのではないかと提言する本です。

わしズム19号」小林よしのり責任編集
私は小林よしのりのよきファンとは言えず、思想信条も違いますが、この雑誌の執筆陣がすごいので買いました。
この雑誌の巻頭には大傑作漫画が載っています。
「夕凪の街 桜の国」のこうの史代の「古い女」という漫画です。
巻頭カラーというのを生かしています。
チラシの裏に漫画を描いているという設定になっているのです。なので、読み取れないくらいの薄さで文字や絵が背景に書かれています。包装紙の裏に書いたような感じのページもあります。
まずその表現形式に驚きました。
わしズムという雑誌は戦争論小林よしのりが責任編集をしているわけで、戦争も外交の手段の一つであるという考えですよね。で、反戦漫画を描いたこうの史代という人がどういう切り口で描くのなと思ったら、戦争を肯定しています。
しかし、単に肯定しているわけではありません。変な風に戦争を肯定しているというか。結果的に大反対というか。戦争に行って自分のだんなが死ぬ日が早く来ることを願う主婦を主人公にしているのです。外見的にはニコニコして男のいいなりになった人生を送っている「古い女」ですが、実は男が戦争で死ぬことを願っているのです。
これは恐ろしい。ストレートに反戦を訴えるよりもどんなに女が男に虐げられているかを語るフェミニストよりもよっぽど恐ろしいです。よっぽど心に訴えかけてきます。
こういう漫画を好戦的と言われる小林よしのりの雑誌にシラッと載せてしまうところがすごいですね。