ヤバい経済学

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

ヤバい経済学 ─悪ガキ教授が世の裏側を探検する

ヤバい経済学
という本を読みました。
この本は面白いです。
データを探してきて常識を疑うという本。
まあ、私の趣味のど真ん中ですね。
ロジカルシンキングの本に似てます。
ロジカルシンキングというのは論理的思考のことです。

最初新聞広告を見たときは「さおだけ屋はなぜ潰れないか?」
のバッタモンかなと思いました。
「ヤクの売人はどうしてママと住んでるの?」とか
「銃とプール、危ないのはどっち?」とか
新聞広告にこういう疑問文が書かれているからです。

でも全然違う。この本は2005年のアメリカのブログで言及された本ナンバーワンに輝いている。それだけ読みやすいし
議論も呼びやすい本なのでしょう。
ちなみに上の疑問に答えると、ヤクの売人の給料が安いから。
時給で換算すると3ドル30セント。ヤクの売人の死亡率は死刑囚より高い。4年間で4人に1人のヤクの売人は殺されてしまう。死刑囚が殺される確率は一番死刑が執行されるテキサス州でも1年間に5パーセントにすぎない。
で、なぜそんな給料の安いのに危険な売人をやるかというと上のほうの幹部になると給料が上がるからとのこと。ハリウッド女優やフットボールの選手にあこがれるのと同じで低い確率にかけてみる人が多いのだとか。
銃とプールはアメリカではプールで死亡する子どもが多い。プールで死亡する子ども年間550人。銃で死ぬ子ども175人。
プール1個と銃1丁を比べるとプールのほうが100倍くらい多い。
とのこと。
で、あと驚いたのが、ニューヨークのジュリアーニ市長でおなじみの割れ窓の理論の嘘。
ジュリアーニ市長が落書きとか窓を割ったりとか軽犯罪でもビシビシ取り締まるようにしたから、ニューヨークの犯罪が減ったという神話。
これもこの本では否定されています。ジュリアーニ市長の前の市長のときから犯罪は減っていたし、ニューヨーク以外の地域でもこういう犯罪対策をしなくても犯罪は減っているらしい。
好景気のせい?好景気が訪れる前に犯罪は減っていたのとこと。だとすると。
この本では1973年の中絶の合法化が1990年代の犯罪の減少の一番の要因だとしている。
中絶がなかったら、その子どもは成長し貧しさから犯罪に走っていただろうからという恐ろしい説。
データもあって、中絶の合法化を先にした州は先に犯罪の減少が始まっているそうです。データの補強もしてあるので、こういう怖い、問題を呼びそうな説も説得力が生まれています。
とにかく、ネタが詰まった面白い本なのです。
教育関係のデータもあります。
ずっと人の頭の良さはDNAのせいなのか育てられ方のせいなのかと私は考えていました。
これもデータが存在しました。
半分半分くらいらしいです。
養子に出された子、その子を養子に貰った親、そしてその子を生んだ詳しいデータを分析したところ。
「養子は学校では比較的成績が悪い。育ての親の影響は遺伝子の力には負けるみたいだ。(略)育ての親はいつまでも無力のままでないのに気づいた。養子に出された子供は、大人になるころ、知能指数だけから予測される運命から力強く這い上がっていた。養子に出されていない同じような子供に比べると、養子に出された子供は大学に通い、お給料のいい仕事に就き、20歳をすぎてから結婚する可能性がずっと高かった。そんな違いができたのは育ての親のおかげだと(略)結論づけている。」
ということでDNAだけで運命は決まらない。感動です。