黒沢清の映画術

黒沢清の映画術

黒沢清の映画術

という本を読みました。
面白かったです。
というのも私はこの監督の映画を8割方観ているからかも。
大学時代に蓮實重彦先生(元東大総長)の教えを受けたことやディレクターズカンパニー時代や相米慎二監督(台風クラブセーラー服と機関銃の監督)とのおのれのスタンスの違い。伊丹十三監督との確執等についてかなり誠実に語っています。とはいえ、かなりユーモアを交えています。
80年代以降の邦画に興味ある人は読んだほうがいいかも。
日活が潰れ、ディレクターズカンパニーが潰れ、Vシネが流行り、映画作家として海外で日本人映画監督が賞を受ける。
という流れの中心にいた人だから。

今日知ったこと。

黒沢監督は「太陽を盗んだ男」の脚本に相米慎二監督とともに参加していた。太陽を盗んだ男というのはジュリー主演で原発からプルトニウムを盗んで原子爆弾を作ろうとする話です。
バイオハザードの原型はスイートホームという映画。黒沢監督はそのゲーム版でもその製作に関わっていた。

相米慎二監督はインタビューに照れてまともにこたえないために海外で評価されなかった。
だから自分はちゃんと答えるのだとか。
日本の監督は監督だけちゃんとやってればいいというところが
ありますね。

黒沢監督の映画にはゴミ袋やダンボールがよく出てきてそれで殴り合いをする。
なぜか?
ワンカットで撮るため。
例えば、消火器とかで殴ろうとすると、本当に殴るわけにはいかないから、殴る人を映してその後、殴られた人のアップとかにしますね。
でもダンボールやゴミ袋では本気で殴りあいが出来るので、
ワンカットで撮れます。
この監督は相当ワンカットにこだわって撮っているようです。
登場人物のアップを撮って心理を説明して、そして行動を描くという演出が嫌いなようです。

まあ映画に詳しい人はほっといても読むだろうから、そこまでにしておいて。
会議での処世術についても語っています。
これを読んで「上司は思いつきでものをいう」という橋本治の本を思い出しました。
映画の会議でも一つの案が出ると何も考えてなかったくせに
すぐつぶしにかかり反対する人がでるそうです。
そういうときの対処策。

「世間ではだいたい、AとA´が対立している時、新たな全く関係のない第三の案を、いいタイミングで出した人が勝つようです。僕は、ずるく立ち回って勝つことに長けているので(笑い)、対立が始まると全く関係のない解決策をずっと考えていて、後はタイミングを見計らうだけというパターンで切り抜けてきました。
 もちろん、本当に人生がかかっているような時には通用しない手段ですよ。時間がない中で、物事を決めなくちゃいけない時の話です。でもそれだったら、僕、得意。」
このように一見柔軟そうに見える姿勢で、実は自分の好きな映画を妥協せずに二十年以上作り続けているのは見事としかいいようがないですね。
では。