プラダを着た悪魔

ファッションに興味がないダサい格好をした女子大生がファッション雑誌に就職し悪魔のような編集長に鍛えられるという話。
これはセックスアンドザシティに似ているなあと思ったら
セックスアンドザシティの監督だった。
どこが似ているかというと華やかな世界を描きながら
その世界の空しさも活写しているところ。
二項対立や命題をまず初めにあげてその着地点を見つけるような結論に持っていくところ。

この場合はファッション業界の華やかな男も憧れてしまう世界をスタイリッシュな映像美で表現しています。
しかし観客はそんな世界にいないユニクロばっかり着ているような人がほとんどです。
観客の反感を引き起こさないでファッション業界にも受けのいい映画になっています。
現代の世界でブランドとは流行とはそしてみんなが憧れる仕事と自分が好きな仕事どっちを選ぶの?
という普遍的なテーマが主人公に降りかかりそのテーマに主人公がある程度の妥当な答えを出すというところがセックスアンドシティに似ています。
セックスアンドシティは都会生活の空しさを描写するドラマでした。

流行を生み出し地に足の生えていないファッション業界で仕事をしているとき主人公はとにかくNYの街を走っています。
で、そのときに主人公の服だけが変わるという映像処理がなされています。
めまぐるしい考える隙を与えないような早いテンポで音楽と映像が奔流することによってブランドという神様だか悪魔に操れている現代人の姿を的確に表現しています。
悪魔のような上司は携帯を使って主人公を操っています。
いつでも主人公は上司に携帯で呼び出されおつかいに出されます。携帯の使い方が上手い映画ですね。他にも重要なシーンに登場します。詳しくは言いませんが。
登場人物もキャラクターがはっきりしてますね。
俳優のキャスティングも素晴らしい。
アン・ハサウェイはダサい格好もかわいいし、ダサいほうがよかったじゃんと観客に言われないようにブランドを身に着けていても素敵です。
メリル・ストリープの長台詞と端的にファッション業界の仕組みを説明するインテリジェンスがすごい。
ファッション雑誌と大量生産のニットとの関係性のヒエラルキーをズバリ解説します。

同僚の嫌な女なんだけど一生懸命で運がない薄幸そうな顔の人もいいし。
主人公が好きな作家の年齢不詳の鳥越俊太郎的ないけ好かない感じもいい。
脇役といえども俳優の顔が忘れられない映画ですね。
父親たちの星条旗という映画は全く逆で俳優の顔の区別がつかないことによって人間は戦争の中でワンオブゼブでしかないということを現していました。
この映画は昔の映画のようにかなり作りこんで俳優のキャラクター設定がなされています。
そこがいいですね。安心です。
パリがフィナーレの舞台です。パリコレに連れて行かれてパリに似つかわしくない俗悪な新しい噴水の前で彼女は何かをします。
この俗悪な噴水はファッション業界を現しているようにも見えます。

最後の何気ないカットにも意味があります。
これからはゆっくりと自分の好きな世界で歩んでいこうという主張にも見えます。
面白れーと感じた映画でした。