ラストキング・オブ・スコットランド

ラストキング・オブ・スコットランドを観た。
こわい。
スコットランド医大を卒業したニコラスが父親への反発心を感じ、このままでレールに乗った人生でいいのかと思い冒険心からアフリカのウガンダの村で医師として働くことにする。
ウガンダではアミン将軍が政権を握り、たまたま村に演説に来ていたアミンの怪我をニコラスが治したことから、気に入られて顧問になる。
アミンが暴走し独裁化していき人々を殺していく様子を権力の中枢にいるニコラスの視点から描く。
アフリカの近代史が織り込まれていて興味ぶかいのだが、
そこがこの映画のキーポイントというわけではない。
アフリカの医療の発達していない村にわざわざスコットランド
から出掛けていくという青年海外協力隊みたいな姿は誰でも
夢見るくらいすばらしく輝いて見える。普通に考えて、絶対肯定的に描かれるべきいいことだろう。
しかし、この映画ではその青年の向こう見ずさが悪夢に変わるさまを描いている。
そこがおそろしい。
この映画のおそろしさが何に似ているかというと都市伝説の
おそろしさだ。
日本から東南アジアに旅行に出かけた女の人がショッピングの途中に、試着室に入ったら行方不明になるという都市伝説をしっているだろうか。
そういう類の話に似ている。
おぞましすぎてここには書けないのだが、この映画のあるエピソードに似た都市伝説を聞いたことがある。
そういうショッキングなシーンがあるので、これはデートムービーではないし、女の子同士で行っても言葉を失うだけだろう。
こわい話が好きな人にだけお薦めする。
そんなトラウマ映像がところどころにはさみつつ、アミンに
感情移入していく主人公の気持ちを丹念に描写している。
上流階級の子弟でありながら、それを嫌悪しアミンの野卑とも見えるエネルギッシュな姿に惹かれていく主人公とそんなええとこのボンボンの雰囲気を好む貧しい生まれのアミン。
二人の全く違う生まれの男がアンチイギリスで結託するところから物語は動き出す。主人公の生まれたスコットランド=イギリスではないらしい。
それから、全編ウガンダロケを行っているので、その成果が画面に出ていて、アフリカの禍々しさに酔いそうになった。
それだけで他のハリウッド映画とは全く違う外観を呈している。何度もいうが、こわい。ロケのおかげかもしれないが、それが得体の知れないものになっている。映画館から出たあともなんだか尾を引く映画であった。