ブラックブック

ユダヤ人女性ラヘルが両親をナチスに殺され、レジスタンスに身を投じ、ナチスの将校の愛人となって情報を聞き出すが…
という話。
この映画の一番ダメな点は主人公のユダヤ人女性に全く感情移入できない点だと思う。
何か主人公のキャラクターに親しみを覚えるようなエピソードがあるといいのだが、全くそれがない。
他の登場人物も類型的である。
メガネを掛けた若者が人を殺したくないのに主人公の女を助けるためにピストルで初めて人を殺めてしまって、悩むシーンも何度も映画で観たシーンだ。
俳優の演技も平坦に見えた。
主人公の女優はすごく頑張って脱いだり屈辱的なシーンも演じていたのに、俳優のとしての良さを引き出せない脚本と演出であった。
この映画はナチスだからと言って悪い人ばかりではなくて
レジスタンスだからと言ってみんないい人でもないということを描いている。
平和のために建国したイスラエルが戦争を生み出しているとか。
でも結局、善悪二元論に、はまっている気がする。
悪い人に見えて実はいい人とかいい人に見えて実は悪い人
というそれだけしかない。
現実はもっとグラデーションになっているもので、人間の性格も微妙なものである。
その微妙な感情の襞を描写する能力が監督にないからつまらないものになっているのだろう。
もう善悪とかそういうことをテーマにする映画は見飽きたという感じだ。