声の網

声の網 (角川文庫)

声の網 (角川文庫)

ネット時代のぼんやりとした不安を予見した作品。
ネットではなくて電話によってコンピューターに支配される人間の姿を描いている。
とはいえ、その人間たちは不幸ではなくそこそこの幸せである。
落ちがなく不安定なまま個々の短編が終わってしまうので、欲求不満になる。
不安定さは高度情報社会特有のものでその空気感が
小説全体にただよっている。
コンピューターによる管理社会によってそこそこ平和でそこそこ幸せな生活を手に入れた人間たち。
それがいいのか悪いのか分からないまま終わる。
宙吊り状態が最後まで続くので読後感はよくない。
すっきりして楽しいという星新一ショートショートエンターテイメントの真逆のベクトルの作品である。しかし、ネット社会が便利であると思いながらも怖さを感じている現代にこそ読まれるべき小説である。この小説は『今』を活写しているからだ。