泣いたアッコ鬼

こんな真相だったらどうだろう。

TBSに、一人のアッコ鬼が住んでいました。アッコ鬼は、人間たちとも仲良くしたいと考えて、自分の家の前に、「心のやさしい鬼のうちです。どなたでもおいでください。おいしいお酒がございます。あの鐘を鳴らすのはあなたも歌います。」
と書いた、立て札を立てました。

けれども、人間は疑って、誰一人遊びにきませんでした。アッコ鬼は悲しみ、信用してもらえないことをくやしがり、おしまいには腹を立てて、立て札を引き抜いてしまいました。そこへ、友達のエリカ様が訪ねて来ました。エリカ様は、わけを聞いて、アッコ鬼のために次のようなことを考えてやりました。

エリカ様が虎の毛皮を着て人間の村へ出かけて大暴れをする。そこへアッコ鬼が出てきて、エリカ様をこらしめる。そうすれば、人間たちにも、アッコ鬼がやさしい鬼だということがわかるだろう、と言うのでした。しかし、それではエリカ様にすまない、としぶるアッコ鬼を、エリカ様は、無理やり引っ張って、村へ出かけて行きました。

計画は成功して、村の人たちは、安心してアッコ鬼のところへ遊びにくるようになりました。毎日、毎日、村から山へ、三人、五人と連れ立って、出かけて来ました。こうして、アッコ鬼には人間の友達ができました。アッコ鬼は、とても喜びました。しかし、日がたつにつれて、気になってくることがありました。それは、あの日から訪ねて来なくなった、エリカ様のことでした。

ある日、アッコ鬼は、エリカ様の家を訪ねてみました。エリカ様の家は、戸が、かたく、しまっていました。ふと、気がつくと、戸のわきには、貼り紙がしてありました。そして、それに、何か、字が書かれていました。

「アッコ鬼さん、人間たちと仲良くして、楽しく暮らしてください。もし、私が、このままアッコ鬼さんと付き合っていると、君も悪い鬼だと思われるかもしれません。それで、私は、旅に出るけれども、いつまでも君を忘れません。さようなら、体を大事にしてください。どこまでも君の友達、エリカ。」

アッコ鬼は、だまって、それを読みました。二度も三度も読みました。戸に手をかけて顔を押し付け、しくしくと、なみだを流して泣きました。