魔法にかけられて

ディズニー映画は脚本がクソという印象があったが、この映画の脚本はよくできていた。
ピクサーが傘下に入ってから意識変革したのだろうか。
予告編の印象より面白いと思うよ。
冒頭の伝統的なセルアニメーションが素晴らしい。
最近はストップしている絵が多いので、暖かみや躍動感が失われてしまった。
最近のアニメが失って久しい本当のアニメーションの質感を楽しんでいると、
いきなり王女が現代に移動する。
現代に来たとたんに急に画面が汚くなる。
テレ東の昼のロードショーの画質に近いものがある。
雨も降り出し、アニメと現代のニューヨークの落差を強調するのである。
ところが、主人公の娘と二人で暮らす離婚弁護士と出会って歌い始めてから
画面は一変して美しくなる。
主人公の男のところにセクシーな王女様がいきなりやってくるという設定は
日本のエロ漫画のようだ。
また王女様が他の世界にやってきて一般人との恋に落ちるというのはローマの休日
同じだ。
主人公がマンションの窓を開けて、歌い始めるとハトやゴキブリやねずみなどが掃除を手伝ってくれる。
ハリウッド映画は動物に手伝わせるの好きだなあ。
主人公は追い返そうとするも胸に目がいき、なんとなく惹かれていく。
おとぎ話の王女が出会って1日で結婚を決めてしまうのはなぜだろうとかすぐに木から落ちて
王子様が抱きかかえるのはなぜだろうとか無防備にリンゴ食べ過ぎだ。
という突っ込みがギャグとして物語と融合している。
主人公は若くてエロい感じなので、日本では演技ができるセクシーな女優があんまり
いないけれど、深キョンあたりか。
主人公は草磲君あたり、ちょっとバカな王子様は東幹久がいいだろう。
意地悪な王女様は夏木マリで決まりである。
主人公がつきあって5年になる彼女がいるのに踏み切れなくて、若い胸の大きな女のほうに行ってしまうのがリアルである。
それに王女が主人公のガウンから出る胸毛を見て今までにない変な感情にとらわれるところも感動した。
つまりこの映画はヒゲとボインなのだ。
ヒゲとボインというのは小島功先生の漫画でユニコーンの曲にもなったことでも有名である。
ユニコーンはヒゲ=仕事、ボイン=女という二つの道が男にはあると歌ったけれど、
ヒゲとボインというのはセックスアピールの代表である。
ヒゲならぬ胸毛とボインというディズニーのアニメの中には存在しない世界をこの映画は
描いている。おとぎ話の中にない、だからこそ現実の世界に王女が惹かれていくという構造になっている。おとぎ話ではなくて現実もそれなりに美しいものだよと主張しているようである。
911以降のアメリカ、小泉政権以降の日本は完全に夢がなくなってしまった。
そのファンタジーのない世界でのリアルというのを奇跡的に成功させた映画だと思う。
ちゃんと夢はかなうというのを最後に成立させているからである。
パロディをパロディとして楽しむだけでなくそれを知らない人にも楽しませ、リアリストも
夢見がちな人も両方を満足させる映画、それこそハリウッドの真骨頂ではないだろうか。