おこりんぼ さびしんぼ

タレント本のベストオブベストという評判を聞き、
購入してみた。
沢木耕太郎の本を読んでいるような、爽やかな文章だ。
沢木のような熱さが少なく、その分笑いがたっぷりと言ったような感じだ。
で、その上品な文体と村上春樹を思わせる絶妙な比喩で若山富三郎勝新太郎兄弟の私生活と初心者にも分かる程度に公の仕事ぶりを描いていく。
読む前はこれだけやんちゃだったんだぜという内容かと思ったらさにあらず、特に若山のかわいらしいエピソード満載で、すがすがしい気分になる。
ところが、二人の死が間近になってくると、一転して
やるせなさ、切なさが迫ってくる。
若山富三郎勝新太郎の間に割り込む形で言うならば疑似兄弟として山城新伍は二人に接していた。
若山が亡くなると勝は明らかにショックを受けていたと書くが、最近の山城の噂を耳にするにつけ、若山を亡くした勝に若山勝兄弟をなくした山城が重なってくる。
また、最近の映画界やテレビ界に違和感を抱いていた二人を語り、今ではとうてい許されない生き方をして亡くなったその最期を語ることが、テレビに干されてしまった山城新伍自身のことを語っているようで、胸が痛んだ。
ということで、山城新伍が元気がない今だからこそ復活してほしいという願いを込めて読まれるべき傑作である。

おこりんぼさびしんぼ (廣済堂文庫)

おこりんぼさびしんぼ (廣済堂文庫)