ホノカアボーイ

一人の青年がハワイの滞在で出会いと別れを経験するという話。
秀作だった。
主人公は岡田将生という人で、始めて存在を知ったのだが、全く演技していないように見えた。
オダギリジョー浅野忠信ナチュラルな演技とはまた違って観客に上手いとも気づかせないので、本当の意味で上手いのかもしれない。
で、岡田君がハワイもゆったりとした島で倍賞千恵子長谷川潤との三角関係に陥るというストーリーだった。
ハワイの島はとても景色が良くて、ライティングいらずで、日本映画特有の暗さがない。
景色の美しさと美味しそうな料理が出てくるところが、「かもめ食堂」や「めがね」に似ていると思った。
倍賞千恵子が親子ほど歳が違う主人公を好きになって、食べ物をいろいろ作ってくれる。
倍賞の気持ちに気づかず長谷川潤を家に呼ぶが、倍賞が嫉妬から長谷川潤にちょっとした
いじわるをして、それが事件に発展する。
倍賞と主人公の関係は疑似親子のようなものだと思った。
息子が連れてきた嫁が気に入らなくて意地悪をしたりする姑がいるわけだが、そんな嫁姑モノのドラマに似ている。
主人公も倍賞の気持ちに答えて、面倒を見たりする。ご飯を作ってくれたからとか愛してくれたからとかそういう気持ちで一緒にいるわけで、決してババア専だからというわけではない。主人公の岡田君の倍賞に対する気持ちは母親にたいする気持ちと同じだと思う。
倍賞のほうも旦那さんがだいぶ前に死んでしまって、一人ぼっちだっちだし、そんなところへ
息子の歳の岡田君が現れたので、疑似親子関係を結びことにしたのだろう。
で、長谷川潤は腐れ縁の彼氏がいて、彼氏と寄りを戻すが、喧嘩しているところを岡田君に見つかる。
岡田君と一瞬いい雰囲気になるのに、岡田君は「やっぱりあの人のこと好きなんでしょ」と聞く、そこで長谷川潤が「うん」と答える。
ここで彼氏のことを持ち出さないで、一緒にどっか行ったりすれば長谷川潤とどうにかなったのではないか。
あえて彼氏の話をして、長谷川潤との間に一線を引いて、倍賞のほうを選んだんじゃないだろうか。
嫁よりも姑を選んでしまって離婚してしまう男がいたりする。
自分の好きな人よりも母親を選んでしまう人達だ。
この映画は綺麗な景色の中で繰り広げられる嫁姑モノである。
普遍的な母親像を描いた映画だ。
最後は「東京タワー」みたいになって終わったけれど、どうなのだろう。
死を美しく描きすぎではないだろうか。
まあ、それもこれを見に来た観客はリゾート映画として観るのだろうからいいのかもしれないが。