デーブ・スペクター ここがへンだよ日本のテレビ

デーブ・スペクターは日本のテレビを語るととても面白いと思う。
ネットとの比較やテレビを見ている上での体感でテレビを語る人が多い中で、デーブ・スペクターはアメリカとの比較という違った視点でテレビを語れるからだ。
前に伊集院のラジオのゲストに出たときには、日本のテレビをアメリカ人が見ると人が多く出ているという印象を持つと語っていた。
確かにひな壇などで多くの芸人が話している姿はよく考えると異様かもしれない。
日本のテレビに人が多く出て、アメリカの番組で出ている人が少ない理由は、アメリカのテレビ番組はラジオ放送から進化したものだからと話していた。
確かにラジオは人が多く出ていると誰が誰だかわからなくなってしまうので、人数が少ない。
そうした伝統があるから、アメリカではテレビに出演するタレントの人数が少ないのかと膝を打った。
また、『博士の異常な鼎談』という番組に出ていたときにはアメリカのテレビドラマでは視聴率というものは気にしないと語っていた。
なぜなら、本放送の視聴率が悪くても、再放送もあるし、ネットでのアーカイブズもある、DVDで見てもいいし、また10億人を超える海外マーケットもある。
ということで、どこかで儲ければいいので、本放送の視聴率なんてどうでもいいのだとか。
彼我の圧倒的なコンテンツ力の違いを見せ付けられた気がした。
ということで、テレビの未来はデーブに聞くのが一番いい気がする。
さすが、好きなコメンテイター1位に選ばれただけのことはある。
で、以下、週刊文春での阿川佐和子の対談の引用である。
阿川もデーブもテレビを知っているだけに興味深かった。
まずは、日本のテレビの現状と変なところである。

デーブ 毎日、視聴率チェックしてるんですけど、今、下手なゴールデンタイムの番組より、朝とか昼間のほうが視聴率取れてる番組があるんですよ。逆転しつつあるんです。
阿川 それはデーブさんが出てる番組が取れてるっていいたいわけ?
デーブ それも入ってる(笑)
阿川 昔は夜のチャンネルの主導権はお父さんが握ってたから、帰ってから見る番組にいろんなものを詰め込んでたけど、今は政治も芸能も朝からあらゆるところでやるから、夜にはもう飽きてて見なくなるんじゃないですか。
デーブ それもあるかもしれない。ワンセグとかネットも見てるから、古館さんがいくら構えてももう知ってるって。お説教するしね。
(略)
デーブ 外国から来た業界の友達が日本のテレビ見て必ず言うことがあるんです。一つはあのめくりの理由がわからない。日本は包む文化だから、おにぎり文化とか適当なこと言ってるんだけど。
阿川 ホウソウ業界だからって(笑)。
デーブ そうそう。それと、画面が字幕スーパーとか時計とかでゴチャゴチャしてて信じられないって。で、有名人でもいちいち名前出すでしょ。あれはアメリカだったら失礼に見える。北島三郎天童よしみなんて名前出す必要ないでしょ。あと出演者が何で自分に拍手するのか。
阿川 あれ、おかしいよね。
デーブ でも、みんな「日本のテレビは生き生きしてる。活気があって即興性がある」とも言う。僕も日本のテレビ凄く高く評価してるんですよ。みんなくだらないって言うけど、どの時間帯見ても必ずどこかで一個はいい番組やってる。大阪のテレビも大好き。
阿川 大阪は過激だとか。
デーブ 勝谷(誠彦)さんとか、みんな腕磨いてんのは大阪ですよ。大阪に行くと攻撃的になるんです。勝谷さんは「お疲れさま」って言っただけで、「疲れてないよ、バカヤロ」って(笑)。
阿川 それだけテレビ好きなら、こんな番組作りたいっていうのがあるでしょう。
デーブ ない。無理だもん。アメリカみたいに風刺の利いたパロディー作りたくても、日本は上へ行けば行くほど洒落通じないからダメでしょ。だから、今みたいに限られた出番の中で面白いことをやってるほうがいい。

明石家さんまも『本人』のインタビューの中で、一日中、ニュースバラエティをやっているテレビなんか面白くない。昼間は砂嵐にしてほしいと言っていた。
昼間のニュースバラエティでの最近ではノリピー事件リピートとかが視聴者に見る気をなくさせているというのはあると思う。
また、アメリカのような風刺を利かせたコメディというのもめちゃイケでちょっと騒音おばさんネタやノリピーネタをやっただけで、抗議殺到になるのを考えると無理かもしれない。
で、テレビの今後はどうなるのか?
雑誌メディアも含めて考えると…

阿川 今度どうなるんですか、日本のテレビは。
デーブ お金かけて作らないからつまんなくて見ないし、見ないからスポンサーもつかなくてお金もかけられないし、悪循環です。だから、結構深刻。でも、デジタルテレビはきれいだし、大きい画面が多くなってるから、また見る人が増えると思います。
阿川 女性出演者は嫌がってますよ。あんなにクリアに映さないでって。
デーブ そうそう。名前は言えないけど、女性タレントで化粧やめてアサヒペイントにしてる人がいる。
阿川 (無視して)最後にこの不景気に生き抜いていこうとしている「週刊文春」にアドバイスはありますか。
デーブ それいい質問だね。「噂の真相」が休刊してから、政治家や芸能人の不祥事とかスキャンダルがやり放題になってるの。ネットでも面白いのはあるけど、どうせネット、って信憑性がなくて、影響力がないんです。
阿川 ネットの影響力って大きくない?
デーブ いやいや、「噂の真相」に出ると致命傷だったから。でも、あれがなくなった分を週刊誌があんまりやってないんです。「週刊文春」はもっと凄いスクープあってもおかしくないと思うんだよね。
阿川 おとなしすぎる?
デーブ 最近、出版社が訴えられると負けることが多いでしょ。訴えるのは自由だし権利あるからいいんですけど、裁判所が原告側を認めすぎるんですよ。裁判官が全然テレビ見てないしわかってない。それで負けちゃうんじゃやってられない。だから週刊誌が悪いというか、束縛がもの凄くあるね。

新聞とネットの間の雑誌というメディアが訴訟を恐れてスキャンダルを取り上げることができないという現状がある。
テレビも視聴者の抗議を恐れて、自主規制を進めていっているし、先細りになっている感はある。
一番スキャンダルを取り上げることができるネットには信頼感がそれほどないという現状だ。
日本のテレビの未来はデジタルテレビとか大きい画面が多くなっているので明るいとのこと。楽観的だが、字デジを導入した家庭で視聴時間が長くなったという統計もあったので、もしかしたら、正しいのかもしれない。
で、テーマから外れるかもしれないが、最後にデーブがテレビに出て発言をするための戦略を語っているところが面白かったので、
引用してみよう。デーブ『朝まで生テレビ』でかなり鍛えられたという。

デーブ あの番組は弱肉強食ですから、割り込むか割り込まないかで明暗があるわけ。自分の番まで待ったらダメです。顰蹙買っても割り込まないと。その技術は「朝まで生テレビ」で身につけたんですよ。あれ、すごかったじゃない。夜中1時から6時までやってて、最後の三十分が勝負だったからね。
阿川 大島渚さんとかが出ててね。
デーブ 三時半頃、大島さんにここで「バカヤロー」って言ってくださいってカンペが出るの。
阿川 エーーーーッ、そうだったの?
デーブ ウソだけどさ。
阿川 もう!で、割り込むコツは?
デーブ 人は喋り出す前に息を吸う。その瞬間は喋れないから、そのとき喋ればいい。絶対成功しますよ。
阿川 あ、それは私もやってます。
デーブ でも、うまく割り込んでも、それだけでは甘い。マイクが多すぎて全員のは上げてないんですよ。
阿川 オンになってないのね。
デーブ カメラがまだ来ていない可能性もある。そうすると、大事なこと言い始めても聞こえなかったり映ってなくてもったいないんです。だから「ちょっといいですか」とか、何でもいいから前置きを言わなきゃいけない。
阿川 「タックル」でも政治家の人たちがだんだん割り込むコツを覚えてくるの。民主党の原口(一博)さんは必ず「阿川さん」て呼ぶんです。
デーブ あ、それいいね。無視できないもんね。
阿川 それで「はい」って返事しちゃうから、それで空気が変わって話せる。もう一つ、たとえばデーブさんがずーっと喋ってると「デーブさんのおっしゃる通りです」って割り込むの。すると、「あ、同意してくれたな」と思ってフッと息を抜くのね。その瞬間「だが、しかし、一点だけ違うんです」って始める。もうみんな巧妙。