勝間と自己啓発と心理学

勝間和代がいよいよバッシングされ始めた。
さすがに『結局、女はキレイが勝ち』という本を巨大な写真つきで
出したら、反発を買う。
だって、テレビに出ている姿を見たらルックスは普通以下だし。
カツマー以外の一般の人は反発を抱いて当然でしょう。
無意味に反発を買うようなことをする理由が分からない。
こんな本を出すことのデメリットのほうが多く、
効率性を今まで主張してきた人とは思えない非効率的な本である。
本を読んだこともない人も反発を抱いてそういうイメージを持ってしまう。このままでは結構まともだった他の本ももしかしたら、くだらなかったのではないかと世間は思う。
新しく出した本もどんなに内容が良くてもアンチによってけちょんけちょんにレビューされてしまうのではないか。
今まで効率性とかお金をもうけようとかでやってきたわけだけど、
この本はそんなの関係なくて、ただただ自己顕示欲の肥大を見せているだけ。ネイルサロンにたまに行くだけで美容などを語ってほしくない。
美容の本は藤原紀香とか吉田栄作の奥さんみたいな人だけが書くことができる。論より証拠である。
この本に勝算があったのだろうか。
あきらかに計算違い。
こんなコンサルタントに問題解決を任せるバカいねえよ。
とまで思ってしまう。
とはいえである。
最近は勝間の存在がうざいあまりに勝間の思想的なバックボーンである自己啓発まで否定されかねない状況にある。
ちょっと待った。
勝間がうざいからといって自己啓発まで否定しないでほしい。
自己啓発に罪はないのだから。
ただ、自己顕示欲の肥大とともに勝間が暴走しただけなのである。
そもそも、なぜ香山リカ斎藤環勝間和代を批判しているのか。
それは心理学VS自己啓発の代理戦争だからである。
心理学と自己啓発は真反対の思想を持っているので、香山リカと勝間は対立せざるを得ないのである。
ざっくりと言って心理学というのは親の育て方が子供の性格に影響を与えると主張している。
今の自分になったのは親のせいだというのが心理学の考え方である。
逆に、自己啓発では起こることはすべて自分のせいである。自分が変われば親も周囲も変わっていくという考え方である。
ということで、全然スタンスが違うのだ。
個人的なことを言えば、私はロストジェネレーションでなかなかちゃんとした仕事にありつけず、うつ病になってしまって、精神科に通院したことがある。
ところが、精神科医は私にSSRIを処方するだけだった。
とにかく眠くなる薬のせいで仕事に遅刻ばかりする私は
仕事がいやだ→うつ病→薬を飲む→眠い→遅刻→怒られる
→仕事がいやだ→うつ病
という無限ループに陥り、軽いうつ病だったのが本物のうつ病になってしまって自殺したいとばかり考えるようになった。
その私を救ってくれたのが自己啓発本とかスピリチュアルの本であった。
掃除をすれば心が晴れるよ。
本当だ。
過去なんて関係ないよ。未来の自分を思い浮かべてから今、ありたい自分を考えるんだよ。
過去に囚われなくなった。
いきなり、成功しようなんてダメだ。本当に小さい一歩でいいから踏み出してごらん。
こんな小さな一歩でいいのかな。よーし踏み出してみるぞ。
人を嫌っちゃダメだよ。人を嫌うことで自分のエネルギーをなくすことになるんだ。
そっか。できるだけ嫌わないようにするよ。
そんな風に自己啓発本と対話することで、なんとか人並に生きることができるようになった。
だから、自己啓発本には恩義があるし、本当に自己啓発本のおかげで救われることができたんだ。
自己啓発本は捨てたものじゃないと思う。
勝間本も捨てたもんじゃなかった。
勉強をして新しい知識を身につけて不況の中を生き延びるというのは
正しかったと思う。
これだけ不況が深刻化してしまうと香山リカのように本当の生き方とはとかそんな悠長なことを言ってられる時代じゃないと思う。
ただ、勝間の言うフォトリーディングにお金を掛けたりとかいう勉強法は本当に有効だとは思えない。
普通にパソコン教室に通って資格を取ったほうがいいと思う。
とはいえ、勝間の自転車に乗って通勤しているところとかガジェットにこだわるところは感心した。
勉強のためにここまでやるのか思ったし、求道者のようなその姿勢は素晴らしいと思った。
ところが、外見は美しくない人は仕事もできないとかそんなことを言い始めて、出す本も他のビジネス書を写しただけみたいなのになってきて、なんかダメになってしまった。
経営学の巨人、ドラッカーによると事業というのは強みを生かすことが大事だという。
明らかに勝間は外見という自分の弱みで勝負しようとしていると思う。
じゃなくて、勉強という強みがあるのだから、勝間は勉強だけしてろ。
他の人も勝間がムカつくからと言って全面的に否定するのではなくて、
功罪を考えろ。

勝間さん、努力で幸せになれますか

勝間さん、努力で幸せになれますか

クイックジャパンの爆笑問題田中インタビュー

近所の古本屋の閉店セールでクイックジャパンのバックナンバーを購入した。
爆笑問題田中裕二インタビューが載っている号。
爆笑問題というのは実は田中が支えているという玄人的な視点がかつて存在した。
それを木っ端みじんに破壊したインタビューがこれだ。
その当時はサブカル誌であったクイックジャパンも何かあるんじゃないかと思ってインタビューしたと思うのだが、掘ってもなにも出なかった。
なにも出ないところがかえって新鮮で10年以上前なのにも関わらず読んだことがとても記憶に残っているインタビューだ。
転載してみたいと思う。
まず田中はアナウンサーになりたかったことが有名であるが。

田中「(略)久米さんが、曲のイントロが流れている間ずーっと喋ってて、最後に“……松田聖子、『赤いスイートピー』”って言うと、ちゃんとピッタリのタイミングで“♪春色の汽車に乗〜って”って歌が始まる。そのリズムがすごく心地良くて、“あっ、いいなー”っていうのが始まりでしたね。ラジオも同じで音楽かける前に喋るじゃないですか。あれが好きだったんです。ふざけて学校でもラジオとか司会のマネしてましたよ。それでアナウンサーに憧れるようになって、高校で放送部に入ったんです」
−放送部ではどんな曲をかけてました?
田中「僕は歌謡曲が大好きでした。『ベストテン』番組みたいな。やっぱりイントロのところで曲を紹介してピッタリ合わせて曲に入るっていうのが好きなんで」
−完全なリズム志向ですね。面白いです。
田中「だから結局ね、何か喋りたいことがあるとか内容を聞いてほしいとかじゃなくて、もっと上っ面な部分というか」
−まさに“MC”だ。
田中「そうですねー。だから今やってるラジオもすごく楽しいんですけど、その当時僕がやりたかったのは必ずしも“お笑い”ってことでもなくて、例えば『えー、今日は東京地方雨がしとしと降っておりますけれども、これで桜とかも散っちゃうんでしょうかねー』みたいな、どうでもいい話をもっともらしくやって、『時計の針は八時五分を回りました、それでは交通情報です』っていうのをやりたくてしょうがなかったんですよ」

中身のない言葉が大好きだという田中。
太田と対照的だと思う。
で、田中のあだち充論とどうでもよい話。
ここまでどうでもいい話を雑誌でできるお笑いの人というのも他にいないのではないか。

田中「あだち充は好きですよ。あだち充はね、セリフ回しですかねー。あの登場人物が切り返す言葉、女の子が言ったセリフに対して主人公が返す言葉とかが、ゲラゲラ笑うとかではない感じで好きなんです。あと、あだち充が得意なのが、こう、心の中のセリフが四角に囲ってあるやつ。それがすごい生きてくるんです。それがその時の本音だったりツッコミだったりして。そういうのが心地いい。『ゴルゴ13』みたいなストーリーマンガでそういうのをやっても駄目だと思うんですよ。あだちさんのマンガってどっちかというとスピード感のないマンガじゃないですか、それが合ってるんでしょうね」
田中「いろいろ指摘されますよ。えーっとね……例えば人と一緒に歩いてるとね、だんだんその人によっていくらしいですよ(笑)太田と歩いてるとするじゃないですか、すると太田にだんだん寄ってくるっていうんですよ。“離れてくれ!”って言われるんですけど、僕も無意識ですから」
田中「あと、僕は知らない道でも勝手に平気で先頭で歩いてっちゃうんですよ、撮影の移動の時とか。スタッフの誰か一人は道を知ってるんですけど、普通、何かの拍子に僕が先頭になっても、その人を先に行かせてついていくじゃないですか。僕は、その人が後ろにいるのを確認して、“この道でいいんだ”ってまっすぐ歩いてっちゃうんですよ。まっすぐだとまだいいんですけど、道が二手に別れちゃうと、なぜか勝手にどちらかを歩いてんですよ。しばらくして後ろから“すいません、こっちなんです”って言われて“あぁーっ”ってなるんですけど」

田中の音楽と映画の趣味も薄っぺらすぎて面白い。

−映画ってどんなのが好きですか?
田中「僕はSF映画が大好きですね。ほんとスピルバーグとか大好きで、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』とか一位を挙げろと言われたらこれからもしんないってぐらい。あと『スター・ウォーズ』とか、ああいうのがどうしても好きですね。『クイックジャパン』の読者のみなさんにバカにされそうなタイプなんですけど、『ストレンジャー・ザン・パラダイス』みたいな難しいのはあまり分からない(略)」
−音楽、詳しそうですけど。
田中「基本的にポップスっていうか、歌謡曲が好きなんです。季節感がある曲。春になるとEPOの『う、ふ、ふ、ふ』とか聴きたくなって、そうするとすごく気分が高揚して、で、家の庭に沈丁花があるんですけど、春の匂いって沈丁花の匂いなんですね、僕にとって。で、蕾のとき“あ、まだだ”って思って、ある日、蕾が“あっ、開いた”ってなると、庭に行ってその匂いをかぐんです。で、“春だー”って思うんですよ。それだけなんですけど、それがすごく幸せなんですよ。……なんかほんとに悩みないですね、こういう奴は」
「11月になると特に聴いてましたね、クリスマス・ソング。だから季節感なんですよ、僕が好きなのは。音楽的なこと以前に圧倒的に、春を感じるか秋を感じるか冬もしくはクリスマスを感じるかってことが僕にとってはすごく重要で、意識してなくても、好きになると後で“あ、そっかそっか、春っぽいから好きだな”って分かるんです」

で、田中自分を語る。
個人的には太田よりも変人だと思う田中の性格の一端がこれで分かる。

田中「なんか、すごい未熟なのは分かるんです。でも、今となってそれを悩むことが出来ないんですよ。“悩む”って自分の胸の中から自然と出てくることでしょ。僕、悩めと言われても悩めないんですよ。それが悩みですけど。でも、そんなこと五分経ったら忘れるんですよ」
田中「例えば太田に、“なんでお前はあそこでああ言うんだ、普通は気遣ってあっちがああしたらこう行動するだろ”って当たり前の大人のことを言われるんですけど。僕、そこで“また怒られてるー”って思うんですよ、子供のように。そっちの方が強くて、話の中身を把握して次に役立てようっていう、本来あるべき回線を脳みそが通っていかないんですよ。“あぁー早くこの時間が過ぎて欲しい”ってそんなことばかり考えてるんですよ。だから全然上達しないんですよ、何も変わらない。」
田中「あのね、自分で思うのはね、ほんと、“こういう風な人間でありたい”とか“今後こういう風に生きていきたい”とかっていうのがなくて、点のまま生きてるんです。ほんとそのまんま、その場その場なんですよ、全部が」

ラジオを聞いていてもよく分かる、偶然の一致が好きな田中らしいエピソードが次。

−関係ないですけど、田中さん好きな言葉ってありますか?
「うーん、そうですね………なんかあるかな……あ、そうだ、“歴史的な”ってフレーズ、あれすきなんですよ。僕、競馬好きなんですけど、たまにすごい馬が出てきた時に、“歴史的な名馬が誕生しました!!”とかって表現を聞くと、ゾクっとする。“歴史の一ページが今〜”みたいな言い方にウワーッって思うんです。将来、歴史の教科書に載るであろうことを自分が見たってことが、うれしくてしょうがないんです。テレビの『知ってるつもり!?』的な番組でも“ここで歴史が変わった”とか“この後、あの人が出会うことになる”って言うでしょ。ああいう感じ。トキワ荘物語とか、大好きなんです。“なんで石ノ森と藤子不二雄”と赤塚不二夫が一緒にいるんだよ、そんなことってあるか!って」

で、田中の大好きな映画バック・トゥ・ザ・フューチャーの名場面ベスト3。
いろんなもののベスト3とかいつも考えてるらしい田中らしいランキング。

バック・トゥ・ザ・フューチャー」名場面ベスト3
1 ラストシーン
2 過去に最初でドクが登場するところ
3 デロリアン号を初めて見た時の犬の顔

まあ普通だとスケボーのシーンとかになるんですけど……
1は一番ゾクッとしたんですけど、マイケル・J・フォックスが「ドク、これじゃ助走に足りないよ」って言ったら「ふん、道なんかいらねえよ」ってバーッってデロリアン号が上がっていく時、2はマイケル・J・フォックスが過去で電話帳調べてドクのとこ行って、なかなかドクは言われてること信じなくて出てこないだけど、いきなり出てきて、なんか変な機械を身に付けてた気がするんだけど、その時のドクの存在感。
3は、わりと冒頭のシーンで、でっかい犬なんですけど、夜中の駐車場に呼び出されて、すんごい表情するんですよ。アップになってて、不思議そうな、いい表情するんですよ。その表情がすごい好き。

こんな感じで読んだ後何も言葉が心に残らなすぎてかえってびっくりというインタビューであった。
爆笑問題でも太田という人はいろんな政治を語っても科学を語っても、最終的には自分の分野に持ち込んで、自分の語りたいメッセージを伝えて終わりにしてしまうときがある。
太田ははっきりした政治思想とかは本当は持ってないと思う。戦争は悲惨なものだとか言葉は何よりも大事なものだとかそんな大きなメッセージを持っていて番組はそれを伝えるための方便にすぎないと思う。
結局何を語ってもいつものメッセージに落ち着いてしまうのかという感じがするときもある。
ところが田中は全くメッセージがない。
メッセージがなくただそのシチュエーションを楽しんでいるだけだ。
強烈なメッセージを持っていつも伝えたくて仕方がない太田と全くメッセージを持っていない
田中。
そんな対照的な二人がコンビを組んでいるというのは奇跡的なことだ。
太田のように強いメッセージを持っている人間というのはたまにではあるが、存在する。
だが、田中のように伝えたいことが全くなく、メッセージのない人間というのは本当に珍しい存在で真の奇人といえる。

さんまと紳助

島田紳助がまた若手を殴った殴らないで騒動になっている。
最近紳助はいい奴じゃないと売れないとかヘキサゴンファミリーはほんまいい奴やねん
とかばっかり言ってて気持ち悪い。
視聴者にとってはいい奴だろうと悪い奴だろうと楽しませてくれれば関係ないからだ。
いい奴でいなくてはいけないというのは紳助の中での強迫観念になっている。
だから少しでも話を乱すような奴がいると殴ってでも矯正してやるという気持ちになる。
吉本の女子社員をなぐったのもそういう心理から来ている。
だが、いい奴じゃなきゃいけないとか和を乱すような奴はいけないと
矯正する行為が一番和を乱すもので集団を脅かすものになっていることに気づかない。
会社のためと言いながら平気でコンプライアンスに反することをやる日本企業の社員と
同じ、同調圧力の強い日本ならではの現象だ。
いい奴でいなくてはいけないという紳助のポリシーに支えられた番組では出演者は
いい奴になろうと努力するわけではなくて、ひたすら紳助の顔色を窺うことに終始する。
紳助の番組では出演者は「紳助さん、紳助さん」と繰り返し言っている。
それは知らず知らずのうちに紳助をヨイショしていることの現れなのだ。
たとえば、さんま御殿では行列のできる法律相談所ほど「さんまさん、さんまさん」と出演者が連呼することはない。
さんま御殿では面白い話をすることに出演者は専念している。
さんまは倫理的にはそれほどうるさくない。いい奴でなくても面白い話ができればオッケーだ。逆にキレイだろうといい奴だろうと面白くなければ冷酷に切り捨てる。
紳助の番組は紳助が神であって、さんまの番組は笑いが神だ。
紳助はこの前テレ朝の番組の中で自分がパニック障害であることを告白していた。
私はさんまも精神的におかしいと思う。
キチガイというか精神的におかしくなければあんなに大勢の人を日本中が観ている中で
仕切ることなどできないだろう。
お笑いで第一線にいる人はみんなどこかしらおかしい。
さんまがお笑い怪獣と呼ばれているのはキチガイなのにそれに自分が気づいていない
というところから来ていると思う。
司会をしてゲストのことを変だ変だと言うけど、あんた一番変だよという。
お笑いキチガイだとさすがに放送的にヤバイのでお笑い怪獣と言っているだけだ。
今年の27時間テレビでさんまと紳助が語っていたが、さんまは病院に何年も行ってないらしい、どこも悪くなくても紳助は病院ばっかり行っているらしい。
これは二人のメンタリティーをも現していると思う。
二人とも心が病んでいるのだ。
だが、さんまはそんなこと気にしない。
紳助は気にしすぎる。
そして、かえって病状を悪化させるのだ。
病は気からというが、身体だけでなく、心も気にすることで余計心の病気が悪化することが
あるのだ。
紳助は社会生活を営めないところまで来てしまっていると思う。
日本では心のケアのために入院をさせるということをあまり歓迎しない。
だけど、紳助はヤバイと思う。
早く入院させるべきだ。
紳助暴行事件に対する結論はそれしかないだろう。

亀井は甘く見ていい

最近、ブログで亀井静香に気をつけろという論調のやつを見かけるのだが、そうなの?
あんな少数政党の一議員でないしかないやつ、暴走したら罷免してしまえばいいと思うのだが。
キャスティングボードを握っているとかいうけど、参議院で誰か一本釣りしてくればいいんじゃないの?
構造上出来ないのかな。
まあいいや。亀井に関しては今週のSPAに出ていた福田和也の読みが一番正しいと思う。
以下、引用。

福田 でもね、今回、亀井を入閣させたのは、賢かったと思うよ。亀井は、“徳政令”で中小企業の銀行返済をするとかむちゃくちゃなことを言ってるけど、ああやって亀井がデタラメなこと言ってる限り、鳩山内閣の他の失敗が目立ちにくい。しかも亀井は民主党じゃないわけだし。徳政令を聞いた時にはみんな「えーっ!」と思ったけど、あれは煙幕作戦ですよ、絶対。
坪内 そのキャスティングは、小沢さんが考えたのかね。
福田 そうでしょ。戦略家だよね。亀井の最重要公約は「郵政民営化の見直し」だけど、郵政がどうなろうと、みんなもう、どうでもいいわけじゃん。国民にしてみれば、会社員が配ろうが、郵政省が配ろうが、別にはがきが届けばいいだけの話でさぁ。“民営化見直し”をおもちゃとして亀井に与えて、めちゃくちゃなことを言わせといて、藤井財務大臣が大弱り-って構造で注目を集めておけば、ちょっとした政権内の齟齬は目立たない。あとは、長妻さんがちょっといいことをやった、みたいなのが目立てばいいということでしょう。

デーブ・スペクター ここがへンだよ日本のテレビ

デーブ・スペクターは日本のテレビを語るととても面白いと思う。
ネットとの比較やテレビを見ている上での体感でテレビを語る人が多い中で、デーブ・スペクターはアメリカとの比較という違った視点でテレビを語れるからだ。
前に伊集院のラジオのゲストに出たときには、日本のテレビをアメリカ人が見ると人が多く出ているという印象を持つと語っていた。
確かにひな壇などで多くの芸人が話している姿はよく考えると異様かもしれない。
日本のテレビに人が多く出て、アメリカの番組で出ている人が少ない理由は、アメリカのテレビ番組はラジオ放送から進化したものだからと話していた。
確かにラジオは人が多く出ていると誰が誰だかわからなくなってしまうので、人数が少ない。
そうした伝統があるから、アメリカではテレビに出演するタレントの人数が少ないのかと膝を打った。
また、『博士の異常な鼎談』という番組に出ていたときにはアメリカのテレビドラマでは視聴率というものは気にしないと語っていた。
なぜなら、本放送の視聴率が悪くても、再放送もあるし、ネットでのアーカイブズもある、DVDで見てもいいし、また10億人を超える海外マーケットもある。
ということで、どこかで儲ければいいので、本放送の視聴率なんてどうでもいいのだとか。
彼我の圧倒的なコンテンツ力の違いを見せ付けられた気がした。
ということで、テレビの未来はデーブに聞くのが一番いい気がする。
さすが、好きなコメンテイター1位に選ばれただけのことはある。
で、以下、週刊文春での阿川佐和子の対談の引用である。
阿川もデーブもテレビを知っているだけに興味深かった。
まずは、日本のテレビの現状と変なところである。

デーブ 毎日、視聴率チェックしてるんですけど、今、下手なゴールデンタイムの番組より、朝とか昼間のほうが視聴率取れてる番組があるんですよ。逆転しつつあるんです。
阿川 それはデーブさんが出てる番組が取れてるっていいたいわけ?
デーブ それも入ってる(笑)
阿川 昔は夜のチャンネルの主導権はお父さんが握ってたから、帰ってから見る番組にいろんなものを詰め込んでたけど、今は政治も芸能も朝からあらゆるところでやるから、夜にはもう飽きてて見なくなるんじゃないですか。
デーブ それもあるかもしれない。ワンセグとかネットも見てるから、古館さんがいくら構えてももう知ってるって。お説教するしね。
(略)
デーブ 外国から来た業界の友達が日本のテレビ見て必ず言うことがあるんです。一つはあのめくりの理由がわからない。日本は包む文化だから、おにぎり文化とか適当なこと言ってるんだけど。
阿川 ホウソウ業界だからって(笑)。
デーブ そうそう。それと、画面が字幕スーパーとか時計とかでゴチャゴチャしてて信じられないって。で、有名人でもいちいち名前出すでしょ。あれはアメリカだったら失礼に見える。北島三郎天童よしみなんて名前出す必要ないでしょ。あと出演者が何で自分に拍手するのか。
阿川 あれ、おかしいよね。
デーブ でも、みんな「日本のテレビは生き生きしてる。活気があって即興性がある」とも言う。僕も日本のテレビ凄く高く評価してるんですよ。みんなくだらないって言うけど、どの時間帯見ても必ずどこかで一個はいい番組やってる。大阪のテレビも大好き。
阿川 大阪は過激だとか。
デーブ 勝谷(誠彦)さんとか、みんな腕磨いてんのは大阪ですよ。大阪に行くと攻撃的になるんです。勝谷さんは「お疲れさま」って言っただけで、「疲れてないよ、バカヤロ」って(笑)。
阿川 それだけテレビ好きなら、こんな番組作りたいっていうのがあるでしょう。
デーブ ない。無理だもん。アメリカみたいに風刺の利いたパロディー作りたくても、日本は上へ行けば行くほど洒落通じないからダメでしょ。だから、今みたいに限られた出番の中で面白いことをやってるほうがいい。

明石家さんまも『本人』のインタビューの中で、一日中、ニュースバラエティをやっているテレビなんか面白くない。昼間は砂嵐にしてほしいと言っていた。
昼間のニュースバラエティでの最近ではノリピー事件リピートとかが視聴者に見る気をなくさせているというのはあると思う。
また、アメリカのような風刺を利かせたコメディというのもめちゃイケでちょっと騒音おばさんネタやノリピーネタをやっただけで、抗議殺到になるのを考えると無理かもしれない。
で、テレビの今後はどうなるのか?
雑誌メディアも含めて考えると…

阿川 今度どうなるんですか、日本のテレビは。
デーブ お金かけて作らないからつまんなくて見ないし、見ないからスポンサーもつかなくてお金もかけられないし、悪循環です。だから、結構深刻。でも、デジタルテレビはきれいだし、大きい画面が多くなってるから、また見る人が増えると思います。
阿川 女性出演者は嫌がってますよ。あんなにクリアに映さないでって。
デーブ そうそう。名前は言えないけど、女性タレントで化粧やめてアサヒペイントにしてる人がいる。
阿川 (無視して)最後にこの不景気に生き抜いていこうとしている「週刊文春」にアドバイスはありますか。
デーブ それいい質問だね。「噂の真相」が休刊してから、政治家や芸能人の不祥事とかスキャンダルがやり放題になってるの。ネットでも面白いのはあるけど、どうせネット、って信憑性がなくて、影響力がないんです。
阿川 ネットの影響力って大きくない?
デーブ いやいや、「噂の真相」に出ると致命傷だったから。でも、あれがなくなった分を週刊誌があんまりやってないんです。「週刊文春」はもっと凄いスクープあってもおかしくないと思うんだよね。
阿川 おとなしすぎる?
デーブ 最近、出版社が訴えられると負けることが多いでしょ。訴えるのは自由だし権利あるからいいんですけど、裁判所が原告側を認めすぎるんですよ。裁判官が全然テレビ見てないしわかってない。それで負けちゃうんじゃやってられない。だから週刊誌が悪いというか、束縛がもの凄くあるね。

新聞とネットの間の雑誌というメディアが訴訟を恐れてスキャンダルを取り上げることができないという現状がある。
テレビも視聴者の抗議を恐れて、自主規制を進めていっているし、先細りになっている感はある。
一番スキャンダルを取り上げることができるネットには信頼感がそれほどないという現状だ。
日本のテレビの未来はデジタルテレビとか大きい画面が多くなっているので明るいとのこと。楽観的だが、字デジを導入した家庭で視聴時間が長くなったという統計もあったので、もしかしたら、正しいのかもしれない。
で、テーマから外れるかもしれないが、最後にデーブがテレビに出て発言をするための戦略を語っているところが面白かったので、
引用してみよう。デーブ『朝まで生テレビ』でかなり鍛えられたという。

デーブ あの番組は弱肉強食ですから、割り込むか割り込まないかで明暗があるわけ。自分の番まで待ったらダメです。顰蹙買っても割り込まないと。その技術は「朝まで生テレビ」で身につけたんですよ。あれ、すごかったじゃない。夜中1時から6時までやってて、最後の三十分が勝負だったからね。
阿川 大島渚さんとかが出ててね。
デーブ 三時半頃、大島さんにここで「バカヤロー」って言ってくださいってカンペが出るの。
阿川 エーーーーッ、そうだったの?
デーブ ウソだけどさ。
阿川 もう!で、割り込むコツは?
デーブ 人は喋り出す前に息を吸う。その瞬間は喋れないから、そのとき喋ればいい。絶対成功しますよ。
阿川 あ、それは私もやってます。
デーブ でも、うまく割り込んでも、それだけでは甘い。マイクが多すぎて全員のは上げてないんですよ。
阿川 オンになってないのね。
デーブ カメラがまだ来ていない可能性もある。そうすると、大事なこと言い始めても聞こえなかったり映ってなくてもったいないんです。だから「ちょっといいですか」とか、何でもいいから前置きを言わなきゃいけない。
阿川 「タックル」でも政治家の人たちがだんだん割り込むコツを覚えてくるの。民主党の原口(一博)さんは必ず「阿川さん」て呼ぶんです。
デーブ あ、それいいね。無視できないもんね。
阿川 それで「はい」って返事しちゃうから、それで空気が変わって話せる。もう一つ、たとえばデーブさんがずーっと喋ってると「デーブさんのおっしゃる通りです」って割り込むの。すると、「あ、同意してくれたな」と思ってフッと息を抜くのね。その瞬間「だが、しかし、一点だけ違うんです」って始める。もうみんな巧妙。

有吉弘行、孤独の影

有吉弘行という人はネットでの評価がとても高い人である。
日経エンターテイメントという雑誌のアンケートを見てみると、一般人の評価はそんなに高くなくて、むしろ嫌いな人のほうが多いようだ。
なのに、主にお笑い芸人についてのブログでは大人気である。
また、2ちゃんねるの書き込みなどを見ても評価が高い。
この一般の人とネットをやる人の評価の格差はなんなのだろうとずっと考えていた。
で、二つ仮説を私は立てた。
一つの説としては、有吉のサブカル好きなのがネットをやる人に伝わっているのだろうなというもの。有吉はサブカル好きで、ナンシー関なんかを読み込んでいるのだろう。だからナンシー関が好きだった人たちに好かれているのだろうという仮説である。
もう一つの説としてはロストジェネレーションの代表として人気があるのだろうというもの。
有吉はロストジェネレーションと同じように良かった時代と悪かった時代を経験している。
それがネットをやっているロストジェネレーションの共感を生むのだろうという仮説。
しかし、『本人』という雑誌の吉田豪による有吉弘行インタビューを読むとどっちも大きな原因ではないと思った。
有吉はなぜネットをやっている人に好かれるか?
それは有吉が孤独の影を背負っているからである。
テレビでお笑いを見て、ブログを書いたり、2ちゃんねるに書き込んだりしている人は
絶対に孤独な人である。
もし、孤独じゃなかったらいわゆるリア充の人のように、もっと楽しいことをしているはずだ。
孤独だからこそ、テレビのことをネットに書いているのである。
有吉の孤独の影がネットの人たちの孤独と共鳴して、有吉に人気が集まるのだ。
ネットをしている人は孤独な人を愛す。
ナイナイの岡村が愛されるのも同じ理由である。
だが、有吉の孤独はそんなものではなかった。
底知れぬ谷のように深かった。
『本人』の吉田豪のインタビューから検証してみよう。

有吉 そうなんです。僕、ああいうサブカルの世界って全然詳しくないんですよ。じゃあ、何に興味があるのかっていうと、すべてにあんまり興味がなくて。
−プロレスには興味がありましたよね?
有吉 プロレスも最近あんまり追っかけてないんで、薄いんですよ。だから意外とああいうこと得意だろうと思われて放り込まれることがあるんですけど、ホントに苦手で……。

実は有吉はサブカルには詳しくないという。好きなこと自体あんまりないとのこと。

−基本的にディスコミュニケーションな人なのに、人の心をつかむ技術はすごいわけですよね。『怒りオヤジ』とか観てると、女の子を泣くまで追い込んでから優しい言葉をかけたりとか、アメとムチがうますぎるじゃないですか。完全にDVの男とやってることは同じで(笑)
有吉 ホントそうなんですよね(笑)。女とDVとかも全然ないんですけど、仕事で「やってください」って言われると意外と踏み込めるんです。ただ、そういう理論を本とかにしてるんですけど、あんまり考えてやってないところはすごくあって、全部あとづけで。
……とにかく、僕には全然何もないんです(キッパリ)。
−ダハハハハハ!また完全服従だ!

よくあるブログのエントリーにも有吉理論に学べというのが多いのだが、本人としてはあとづけのようだ。
だが、あとづけであそこまで書けるのもすごいと思う。

有吉 ……(まだ警戒しきった顔で)だって、ものを書く人が一番怖いんですよ、前から。やっぱり猿岩石のときに文章が一番怖いと思っちゃったんで。あれ、一番傷つくんですよね……。
−「ヒッチハイクはヤラセだった!」とか大絶賛から一転して大バッシングを受けたことでマスコミ不信になってるんですね。そういう経験を経て、マスコミ対応は良くしよう、とか思います?
有吉 はい、それはすごいあります。だから、ホントにトラウマなので異様なぐらい頭を下げて。
−それが心がこもってないように思われて。
有吉 そうなんですけど(笑)。怖いですね、もの書きの人は。林真理子さんと対談したときも、ずっとヨイショしてましたし。

マスコミからバッシングを受けたことで、ものを書く人にトラウマがあるようだ。
インタビュアーの吉田豪も怖いという。
かわいそうな有吉。

有吉 ……僕、ホントに付き合いが上島竜兵さん以外とすごい薄くて、友達って誰がいるっていったら全然いないんですよ。それぐらい当時の同級生も僕のこと知らないから、これといって悪いふうにも言えないというのがホントのところなんだと思うんですけど……。
(略)
−じゃあ、番組で誰かに噛みついたり、放送対応出来ないよけいな暴露をしたりするのも、もしかしてすべて流れに乗ってるだけなんですか?
有吉 そうなんですよ。スタッフや演者さんから「わかるよね?」っていうのを感じちゃうんですね、勝手に。だから提供しちゃう。断れないんで。それで適当に暴露しても、「いや、もっとあるだろ。もっとちょうだい」って言われてるなって。それで嘘でもいいから刺激的なことを言おうと思って。
−無駄なサービス精神ですねえ(笑)。

友達がほとんどいないのに、サービス精神だけ旺盛な有吉。かけがえのない友人の竜ちゃん。

−ダハハハハ!また消えたらああいう酷い扱いされるんだろうなと思ってるから、もともとディスコミュニケーション癖があった人が、さらに心を閉ざしちゃうわけですね(笑)。
有吉 はい、すっかり閉ざしてますね。
−たとえば、同じ心の傷を持ってる人にだけは、安心して心を開くことができたりするんですか?
有吉 そうですね。だから、つぶやきシローさんとかと話すと珍しく話が弾んだりはします。でも、その現場お誰かに見られると恥ずかしんで、ホントにふたりっきりのときだけで。ただダンディ坂野さんとかはまた違うんですよ。どっかで自分はまだ大丈夫、みたいな、落ちてないって感覚があるから。
−心の傷が足りないんですね。
有吉 そうなんですよ。……僕、やっぱり芸人とかにもいまだにバカにされてるような感じしますからね。ネタをやってきてないことに、どっかでコンプレックスがあるので。
−完全に被害妄想ですよ、それ(笑)。

つぶやきシローと話がはずむって、『アメトーーク』はガチだったとは。

−間違ったサービス精神と猜疑心の塊で。
有吉 はい。世の中ホンットに嫌な人間しかいないと思ってるんで(キッパリ)。
−ダハハハハ!芸能人だけじゃなく、マスコミからなにからそうだ、と(笑)。大変ですねえ、「電波少年」で背負ったトラウマは……。
有吉 大変です……。
−いいこともありましたよね。金銭面もそうですけど、たとえば番組の企画で藤谷美和子さんとデートの約束を取りつけたりとか。
有吉 それもホントに藤谷美和子さんが好きかっていったら、好きじゃないんですよ。
−え!自分で会いたいって言ったのに?
有吉 変わった感じの人を選んだほうが番組的に面白いんじゃないかって。もし会っても話すことは何もないです。何が好きですかっていっても、別になんの作品も観たことないし。
−じゃあ、たとえばいま好きな人っていますか?その辺の趣味も出さないタイプですよね。
有吉 そうですね。(略)下手に好きですとか言うと、そういうので仕事が来たりするんですよ。
−そこでしくじりたくないんですね。
有吉 はい。実際、底が浅かったりとか、みんなが知ってることをみんなと同じように好きだから、そういうときに面白いこと言えないんで、あんまり好きとか言わないです。
−一言でいうと病んでますよね(笑い)。
有吉 病んでます。意外と快活なところはあるんですけど、やっぱりどこか警戒しながら生きてる感じはしますね。ホントそうです、揚げ足を取られないようにしてるだけですよ。
−ダハハハハ!それだけ!
有吉 それだけです。何が楽しいのか問い詰めたくなりますね……(しんみりと)。
−ダハハハハ!せっかくなので今日は心の病理をどんどん探っていきますけど、それはいつ始まったトラウマなんですかね。やっぱり対父親との関係で?
有吉 たぶんホントに親父が原因だと思いますね。親父がホントに働かなくて、ずっと家にいるっていうのが、みんなの家と違うなっていうところから始まってるんでしょうね。
(略)
−となると顔色をうかがうしかない。
有吉 はい、そこからですね。
−親にも揚げ足を取られないようにする。

揚げ足を取られないようにするために、人の顔色をうかがい、嘘ばっかりついてしまう有吉。やはり、父親との関係が影を落とす。それにしても屈折しきっている。

−家でも学校でも芸能界でもアウェーで。
有吉 竜兵会はホームであるわけですか?
有吉 だからあそこだけですね、ホントに。一番苦しいときにちゃんと普通に接してくれて、「辞めるな」とか言われてたんで。でも悩みを相談したことはないですし(笑)。
−ダハハハハ!じゃあ、いま話してるような病理について相談したことも一切ないんですか?
有吉 ないです。女とかにしても、泥酔状態でしか口説いたことないですからね。
−なんか相当こじらせた人ですよね。
有吉 ハハハハハ!そうですね(笑)。
−童貞喪失が遅かったりしました?
有吉 十八歳か十九歳ですね。学生時代モテないことはなかったし、とも付き合いたかったんですよ。だけど、人のことをバカにして「あんな女と付き合ってんのか」って言っちゃうので、じゃあ俺は、こいつと付き合ったらみんなに何か言われるんじゃねえかなって思うと、とりあえずやめとこうって。
−こじらせてますねえ……。
有吉 こじらせてます、完全に。

女に対してもかんぜんにこじらせている有吉。そこまで他人の目を気にしなくても…。竜兵会があってよかった。ネタだと思ってたけど、竜兵会って有吉の最後の砦じゃないか。友達のいない暗い高校生が文化部の自分の部室だけは明るくいられるみたいな感じか。

−上島さんとか、ああ見えて意外とコンプレックスを持ってる側じゃないですか?
有吉 コンプレックスの塊です。だから全然違うんですけど、理解者といえば理解者なので、居心地がいいのかもしれないですね。まず「俺は全然面白くないけど」っていうのから始まるんで、話を聞きやすいんですよ。
−じゃあ、自信回復法は何かあるんですかね?舞台に立ってお客さんを笑わせるのも、やりたくないみたいだし。
有吉 たまに、たとえば『本人』みたいな雑誌で、インタビューとかじゃなくて勝手に名前出してくれたりすることがあるじゃないですか。全然知らないところで褒められりすると「理解者がいる!」って。
−「ひとりじゃなかった!」(笑)。
有吉 はい、そういうときだけです。その何日かだけは、それがちょっとだけど自信になったりとか嬉しかったりとかしますね。
略 ハハハハハ!なんか変わった人に褒められたいんですよね。ひと癖あってちょっと尊敬されてる人が、どっかで褒めてくれると嬉しいですよ。だから、そこに届けとしか思ってないところもあるんですけど……。
−ちゃんと届いてるから大丈夫ですよ!

なんか安心した。なんにも楽しくなさそうな有吉だが、人から褒められるのは嬉しいのか。
このブログも届くといい。
それにしても、ここまで孤独な人というのはそういないのではないか。
基本的に友達が少ないことを公言する人には共感を持つ私であるが、ここまで孤独だと
共感を通り越して、切なくなる。胸を打たれる。
そういえば、有吉の顔はどことなく寂しげな気がする。
有吉と顔の似ている大学時代の後輩を思い出す。
大学を卒業して以来、友人への連絡を一切絶った彼は元気なのだろうか。
そんなことまで思い出してしまった。
有吉はこれから生きていけるのだろうか。
「生きろとは言わん、死なんでくれ」映画『ユリイカ』からパクってそんな言葉を贈りたくなった。

福山雅治、Rioを語る

この前福山雅治について書いたエントリーがえらく評判がよかったので、
http://d.hatena.ne.jp/yamauchikazuya/20090801

また福山について。
『ROCK’N’ROLL TIMES No.3』というタワーレコードが出しているフリーペーパーを今日もらってきた。そこで『お願いマスカット』で『squall』を歌ったRioについて熱く語っていた福山が面白かったので、引用してみる。あと、同じフリーペーパーに載っていたリリー・フランキーの福山に対する手紙がとても印象深かったので、載せる。
以下Fが福山、Lがリリー・フランキー、インタビュアーは吉田豪である。

F 実は今日Rioちゃんの「squall」を観てきたんですけど(笑)。もはや音楽人の目で見てるんで。
−ユニット組んでもいいんじゃないですか、Rio+って感じで(笑)
F Rio+、いいですね(笑)
L この人のAV評は、エロじゃなくて人柄を見るから、Rioの仕事の仕方にすごく感銘を受けてるの。
F 最初はRioちゃんのAVを普通に観てたんですけど、RioちゃんがあるAVで、自分のプロフィールを一人しゃべりでしゃべりながら、一問一答をずっとしてたんです。ワンカメでずっと回してて、それで好きなタイプとか食べ物とかいろんなことを聞かれてる中で、「オナニーは好きですか?」みたいな話になったんですよ。で、「オナニーはう〜ん……たまにします」みたいなことになって、「いまここでしてみてください」「えっ?」ってなって、……まあ、オナニー始めてエクスタシーに達するんですけど、それ最初から最後までワンカメ、ワンロール、ワンカットなわけですよ。
L 監督が相米慎二だったんじゃない?
−かなりの長回しですからね(笑)
F しかも、ハリウッドで行われてるようなCGを使ったワンカメ、ワンカットに見せる手法ではなく、据え置きの家庭用のカメラなんですから。……いや、すごいなと思いましたよ。それを観てから、とにかくRioちゃんがここまで頑張ってるんだし、俺も『ガリレオ』で長ゼリフが10ページあるからって「覚えられない、カット割ってくれ」なんで監督に言っちゃいけない。そんなこと言うのはもうやめようと思って。
L 学んだんだ(笑)。Rioの演技法はすごくいいって言ってたよね。「Rioは死に間を作らない」って。
F 作らないんですよ。全部の間に意味があるんですよ。
L 「チンポと唇の距離感で死んだ間を作らないんですよ、リリーさん!」って起きぬけの俺は熱弁されたことあるから(笑)。
F あれにシンパシーを受けましたねぇ。
L Rioの演技法でね。それがやっぱり相手にも伝わるんですよ。だからこそ、Rioが「squall」を歌って。
F Rioが「squall」を返してくれた。……ということは、もう俺たち付き合ってるってことなんですよ(笑)
L ……完全に狂った童貞だから(笑)。『お願い!マスカット』はグラドルを過剰に持ち上げないから、AV嬢のほうが位が高いでしょ。週刊誌にありがちな変なセコいヒエラルキーがない、そこが気持ちいいの。
F わかります。
L 完全実力主義
−むしろグラドルのほうが目立たないですからね。
F で、おぎやはぎの小木さんのほうが……。
L あ、もう焼いてるわけだね(笑)。
F Rio、Rio言うんです(笑)!でも、小木さんは生き生きしてますね、あの番組で。
L 福山君のほうが先にRio好きだったからね(笑)。
F そうですよ!まあ、それはいいんですけど。とにかく、一般的にAVの子がグラビアになったときのあの扱いっていうのは、僕は納得できないですね。
L 福山君がRioを撮るべきだと思うよ。
F 僕が撮るなら、もう脱がなくていいです、全然。普通にしてていい。普通に多摩川あたりをデートしている感じがいいですね。
L 逆に脱ぐとエロスを感じない派なの?
F いや、かすみりささんには脱いでほしいですから、やっぱり。スタイルいいですよね。最近のS級女優って人たちは、ホントにスタイルいいですよ。何のタイミングでAVを始めたんですかね、みんな?
L 結局、最初に誰が声をかけたかってことなんじゃないの?最初にAVのプロダクションが声かけるか、アミューズが声かけるかっていう違いで。
−最近はアイドルからAVに流れる人も増えてますけど、単純に実入りを考えたらそっちに行っちゃうのもわかりますよ。
L でも、AVの子なんかお金もらってないよ。グラドルももらってないけど。バクシーシ山下さんが言ってたけど、AV業界に入ってくる女の子はみんな不器用な子なんですよって。

人間どこで人が見ているかわからないものである。Rioのがんばりを福山が見ていて、
それが『ガリレオ』の演技にまで影響していたとは。やっぱり人間頑張るといいことがあるんだね。
AV女優のような社会的弱者に対する視線が優しい。それが福山の魅力になっているのだと思う。福山もこの前ブログに書いたように下流出身である。下流出身の人間はかえって弱者を切り捨てるようなことを言うことが多い。だが、福山は暖かい目をAV女優に向けている。

そして、次はリリー・フランキーの福山への手紙だが、ここでも絶賛である。児玉清もアンアンで福山を激賞していたし、厳しい美意識を持った二人にここまで褒められるということは稀なことだ。年上の男にそこまで好かれるというのはよっぽどの魅力があるのだろう。

福山くんへ
 なにか、改めて言葉にするのは照れくさいけれど、最近よく、思うんです。
 東京にやって来て、もう、27年くらい経ってしまいました。その中で、同級生や先輩、後輩。仕事仲間や遊び仲間。たくさんの人々と知り合い、仲良くなりました。
 福山くんとは、数年前に何の脈略もなく知り合い、自然と楽しい時間を共に過ごすようになった。千葉でいちご狩りをしたり、大阪で亀を食べたり、九州で正月にウイスキーを飲んだり。ボク自身のことを思い出せば、仕事でもないのに、こんなに色んな場所に誰かと出掛けたこともなかったと思う。
 少し前に、ポンポン船に乗って夜の東京湾に浮かんだとき。船の先っぽで、遠くに見える東京の夜景を座ったまま、ずっと眺めている福山くんの背中が子供のようで、とても愛しく感じました。あの時、福山くんが手に持っていたかき氷は、すっかり溶けていましたよ。
 二人とも九州からのこのこ出てきて、四十代になり、快速電車に乗り換えたような速度でカレンダーがめくれていきます。
 でも、最近よく、思うんです。
 東京に来て、やっと純粋にともだちと言える人ができたのじゃないかと。
 男らしいのにかわいくて、理屈っぽいのに正直で、誰にでも分け隔てなく優しく気を使い、いつも心配してくれる人。
 そんなともだちがいることで、ボクは自分の人生を少し、豊かなものだと感じています。
 もしかしたら、僕たちがずっと話したり、探したりしていた「幸福」というものは、こういうことなのかもしれませんね。
 二〇〇六年 夏の終わり 
 リリー・フランキー

女が死んで男が泣くみたいな恋愛至上主義の映画が流行る中、「東京タワー」という小説で母親の愛という普遍的な情念を蘇らせた人がリリー・フランキーである。オカンが亡くなった今、リリー・フランキーは福山との友情に夢中なのだ。もしかしたら、近いうち友情を書いた私小説リリー・フランキーの手によって書かれるかもしれない。

残響(CDのみ通常盤)

残響(CDのみ通常盤)