放送作家セミナー1

放送作家セミナーに行ってきました。
無料で1月に4回あります。
土曜日に渋谷で開かれています。
古館プロジェクトのアングルという作家集団のセミナーですね。ネットで申し込んだらすぐ受けられました。運がいいみたいです。
で、30人くらいで番組を14本やっているという樋口卓治という放送作家の人の話を聞きました。
「じゃん」とか「さー」とかいう語尾でちょっと警戒したのですが、聴講生が何を言っても馬鹿にすることもなく、誠実に話してくれていい人でしたね。
なぜ、無料かというとリクルート活動というか青田狩りをやってないからとのこと。で、先輩から無料で教わったことを還元していきたいからだとか。
生徒は全員が放送業界志望の人かと思ったら、社会福祉事務所とかで生かしたいとか話にオチが欲しいとかそういう人もいたので驚きました。

で、企画というのは0→1ではなくて、1→1´→2というものである。無から有を作り上げるものではなくて物事の角度を変えて見ることなのだという。すなわちそれがアングル。
放送作家は芸術家ではなくサービス業なので芸術家のように発想がわいてくるまでひたすら待てばいいのではない。
で、シンデレラを例に角度を変えて考えるとというお題。
私が指されて、結婚したあとうまくいかないのではないですか。王子様とシンデレラは生まれも育ちも違うしといつもの社会学的な夢の無い話
を言いました。
樋口さんは例としてたとえば、シンデレラがぶりっこのさとう珠緒みたいな計算で全部やっていたらという設定を例を出しました。
で、さっきの1→1´→2の1´と2の間に時間を変えてみたらどうかとか江戸時代のシンデレラとか。
そうすれば、まっさらな状態で江戸時代シンデレラを考え出すよりはるかに簡単に思いつく。

で、企画は掛け算なのだとか。
たとえば、
がっちり買いましょう×グルメ=ゴチになります
がっちり買いましょうというのはものの値段を当てて当たったら物がもらえる番組です。
ゴチになりますはレストランで値段を決めて食事をして、一番遠かった人が全部自腹でおごらなくてはいけないというナインティナインの番組。

で、たとえば、
本物は誰だ×?=新しい企画
?のところにたとえば、東大生とかナースとかね職業をいれてもいいし。モノを入れてもいいし、ワインの本物を当てる番組とかね。
と言った感じ。

で、そういうシステムが出来上がると好きなことが出来る。
たとえば、ゴチになりますだったら、ある程度安定したらスペシャルでちょっと変わったことやったりと。

でね。
たとえば、
ドッキリ ドラマ 旅行 
占い   コント 相談
天気   トーク アニメ
ニュース グルメ 漫才 
という風にジャンルがありますね。
旅行×コント=新企画
コント×相談=新企画

こういう風に
これを何通りも組み合わせられるのが才能。
レシピの数が多いということです。
たとえば、道場六三郎は和、洋、中、イタリアンとかいろんなレシピが頭の中にあってそれを組み合わせて料理を作っている。

で、こうやっていくとどんどん新企画が出来ていくのですが。
問題は自分でどれが面白いのか分からなくなるという企画マヒに陥るということです。
テリー伊藤ダンス甲子園を当てたあと、これからは野球と甲子園に組み合わせようと本気で考えたそうです。それって普通の甲子園じゃないですか。
あとは芸能人相撲大会ではなくて素人のデブを集めて相撲をとらせようと考えたADもいたらしいです。それだったら大相撲を見ればいいし。


で、企画の具体例を挙げますと。
恋愛×旅行=あいのり
旅行×クイズ=うるるん滞在記
というようにあがりますね。

で、企画は組み合わせなので簡単に考え付くと、それが面白いかどうか判断するのが難しいという話をしました。
で、どう判断するかというと、自分の中にルールを作るのだそうです。そのうえで、頭の中にあるアイディアを話すか決めるのだそうです。
たとえば、笑っていいともでは。
暴力ネタ
差別ネタ
病気ネタ
下ネタ
は、やらないと決めたそうです。
そうすると、独特の雰囲気があの番組に出てきて、長く続いているわけです。
そうすると、オリジナリティというものが出来るわけです。

で、樋口さんのルールとしては
「わくわくさせて満足させる!」というルールだそうです。
視聴者に期待させて、本編がそれ以上なモノを考えるということ。
企画がどうしたら輝くか?ということを考える。
たとえば、赤坂プリンスのバーで恋人にクリスマスとかにプレゼントとか言って、松ぼっくりを渡したら、がっかり。
でも、枯葉が舞い散る公園を二人で歩いてて落ちている松ぼっくりを渡したら、喜ぶ。
こういうこと。
ということで、本編が同じなら、前ふりを変える。

これは、新聞のラジオテレビ欄で大物K登場という前ふりをしておいて、木村拓哉だと思わせといて、KONISHIKIとかそういうこと。本当に大物だから。
と、視聴者とのだましあいをやっているわけだ。テレビは。

で、その順番が大事だということ。
企画はそれによって輝いていく。

で、それを「フリ、オチ、フォロー」という言葉で呼びます。
からくりテレビの例を挙げると最初に海外のビデオ映像のコーナーがありますね。

で、子供が転ぶのをオチに使うとする。そしたら、編集で子供が転ぶ映像の前に子供がよたよたする映像とかを入れちゃうとつまらなくなる。子供が転ぶのが分かってしまうから。
で、まったく関係ない誕生日のパーティーの映像(フリ)とかを入れて、子供が転ぶ映像(オチ)を入れる。で、転んだ子供が立ち上げて平気な顔をしている映像(フォロー)を入れる。

だから、よくフリとオチというのはよく聞くけれど、フォローも入れると面白いわけだ。

あとは、からくりテレビのビデオレター。このコーナーは息子に向かって田舎の両親がビデオ映像で語りかけるというコーナー。
たとえば、フリ。
息子は暴走族で大変だった。

オチ
でも、今は更生して、会社に勤め仕送りをくれている。

フォロー
両親が通帳をカメラに見せて、その仕送りは一銭も使ってませんと言う。

あとは、フリ
貧乏な家で息子は野球をやっていたけれど、お金がかかると言って中学になったら野球を辞めると言った。

オチ
でも、お前はバスケ部に入ったよな。

フォロー
オヤジが一言「意味ないじゃーん」

この意味ないじゃーんは一時期、さんまが気に入って使っていてちょっと流行語になりました。バカやろうだとつまらないので、意味ないじゃーんにしたらしい、作家が考えたのかも。
ミスチルエスという歌から取ったらしい。

で、川崎徹が作った関西電気保安協会のCMも例に挙がる。

アパートみたいなセット。
扉が並んでいる。関西のオヤジを連れてきて、演技をしてもらうことになる。関西のオヤジだけあって結構面白いオヤジである。
フリとして、そのオヤジが来たら、ADを殴りつけ、散々怒る。
オヤジにこう説明する。
「ADがテープを忘れたので、ワンテイクでいかないといけません。一度でも間違えたら、またセットを作り直して、また後日撮り直しです」
オヤジ、緊張。で、ドアのノブを取っておく。
で、CM撮影開始。
オヤジ、ドアのノブを引いて、せりふを言おうとしたら、ドアのノブが取れ、元に戻そうとする。
緊張しているが故の面白いリアクションが撮れた。成功。

あとは、いいとものADの話。
いいともで、タモリが出てくる前に、
ADが「タモリさんが出てきたら拍手お願いします」
と言って、AD登場。
ADに拍手する観客。
「もう一度お願いします」
と何度も客に強制する。
11:59:50くらいに「で、じゃあ、最後、すいませんもう一度だけ練習お願いします」と言ってAD退場。

で、ADがまた出てくると思って正直うんざりしていた観客はタモリが出てきて、びっくり。大拍手で盛り上がる会場。
番組は最初に会場のテンションが上がるので最後まで面白いものになるのだった。

で、そんなことをやっていたADが後の片岡飛鳥であった。

片岡飛鳥っていうのは今はめちゃイケの総合演出をやっているえらい人。
そういう、考えなくていいことを考える人が面白い。
といったところで、セミナーの本編が終了。

あとは質疑応答に移ったのだけど、それも書きますか。

番組を考える上でパクリ番組を企画するのは簡単なので、社会の逆をいく番組を作るといい。
たとえば、学校へ行こうという番組は新聞やニュースなどで散々学校が荒れているという論調で報じられていたから。
本当に学校は荒れているのだろうか?
という疑問からうまれた。
学校へ行こうという番組に出てくる生徒は純真で昔とちっとも変わっていない。そこが新鮮でまだ続いている。
電車男もそうで、2ちゃんねるは悪の巣窟と言うイメージがあった。そこに社会のイメージとは逆の善意の人々がいるということで、あれだけ話題になったのだ。
踊る大捜査線は今までの刑事とは逆のものを作ろうとした。
あだ名はつけない。取調べのときテーマ曲が流れないなど。
大ブームになるものは今までと違うものとか時代と逆にいくものだったりするのだ。

そして、学校へ行こうでV6が知られるようになったのだが、やはり最初視聴者はV6のことを知らないわけでV6より企画を前面に出した番組作りを心がけたそうだ。
失敗例としては、ジョビジョバという小劇団のスターを使って失敗したフジテレビの番組が挙げられる。ジョビジョバのことはみんな知らないのだから、企画を前面に出すような番組を作らなくてはいけないのにいきなりジョビジョバが出てきてコントをするような番組を作ってしまって失敗した。

最近のテレビであるが、若者はあまり見ていない。視聴者の中心はおっさんおばさんである。おっさんおばさんがテレビの視聴者の中心になるということで、「楽しくなければテレビじゃない」→「役に立たなければテレビじゃない」に変わった。
確かに伊東家の食卓を筆頭として情報番組が多い。
だが、面白いことがやれないからこそ、面白いことを不得手なことにまぶしていく。役に立つ番組に面白さを出していくようにして自分の味を出していく。
自分が面白いと思うものも結果として視聴率が取れればオッケー。取れなかったら自分が悪いと思う。
視聴率というのは遅れれば遅れるだけ下がるもので野球の延長で繰り下がった番組は大概視聴率が下がるものである。
最近は八時ちょうどではなく、七時五十数分から番組を始めるのも早ければ早いだけ視聴者がチャンネルを合わせそのまま見るから視聴率が上がるからである。

パクリとオマージュの違い。
ばれるかばれないか。ばれないようにパクらなければならない。

テレビのバラエティにもサイクルがある。
ネタブーム→ロケ番組→アイドルがロケ→素人→ネタブーム
この繰り返し。
今は芸人が増えネタをやらせるのに飽きてロケ番組が主流になっている。そのうちアイドルがロケをするようになって、それも飽きて素人がテレビに出るようになるだろう。
テレビというのはハイエナみたいなもので一度どこかがウケたものを他の局も追随して同じことをやるものである。
たとえば、血液型が流行れば血液型の番組ばかりになったり。
「芸能界は森」だと例えた人がいる。大声で叫んだ人のほうに群がるのだという。

バラエティの台本というのは地図みたいなものである。
タレントはその地図を元にどこに行ってもいい。
ぶっ壊してもいい。
その中で放送作家の期待以上の仕事をしてくれる人をまた使おうと思うらしい。たとえば、アンタッチャブルの山崎など。

という感じです。