ギボギボ90分

ギボギボ90分!―と学会レポート

ギボギボ90分!―と学会レポート

ヒマつぶしのために、期待しないで読んだのだが、大当たりであった。
これは傑作ミステリの骨格をそなえている。
希代の天才犯罪者・宜保愛子がテレビで完全犯罪を行ったのを死後数年経ってから、懐疑主義者が暴いていく
という物語である。
犯罪者(宜保愛子)に探偵(と学会の連中)が限りなく
尊敬の念を抱いているところもいい。
宜保愛子ピラミッドの謎に迫る」という番組を検証するわけだが、宜保愛子がリサーチしたであろう文献を
丹念に調べていくのだ。
その中で、宜保愛子が大変に優秀かつ真面目なリサーチを行っていることが判明する。
宜保愛子が借りたであろう図書館を調べることで
宜保のリサーチの仕方が段々分かってくる。
まずは、近所の図書館で子供向きのピラミッドについての本を借りてざっと予習する。次にやや大きめの図書館で体系的な本を借りてくる。「世界考古学大系」という本だということが分かる。次に東京都立日比谷図書館(1ヶ月の貸し出しが可能)の洋書コーナーに行き、ツタンカーメンについての様々な情報が出ている本を借りる。図書館だけではダメだから、博物館に行き、博物館の売店で書店では売っていないシンポジウムの本を
買ったということまで分かっている。
宜保愛子は非常に教科書のような優秀なリサーチャーだったのだ。
ただ、残念なのは専門家の助言を得ないで自分一人で研究していたために、基本的なところで、ミスを
して、死後、と学会に追い詰められてしまうことである。
足取りを追うことで、宜保愛子が英語に堪能であったことが浮かび上がってくる。
コールドリーディング(相手の表情などを読むことによる占い師の技法)とホットリーディング(事前にリサーチすることによって読む技法)を巧みに使い分けていたということも分かり、
宜保愛子という人が凡百の霊能者や占い師とは格が違ったということも納得させられた。