吾輩は主婦である(上)

吾輩は主婦である〈上〉

吾輩は主婦である〈上〉

吾輩は主婦である(上)
本屋に平積みされていたので、即購入。
クドカン宮藤官九郎)のシナリオ本。
クドカン初の昼ドラ。現在放送中。
ビデオに撮るのは面倒くさいし、リアルタイムでも
観られないので脚本を読むことで済ますことにした。

平凡な主婦がお金の心配をしすぎて、千円札の夏目漱石の霊が
取り付いてしまうという話。
クドカンという人は芸能人の名前がたくさん出てくる脚本を書くのが特徴です。
何十年か経ったら分からなくてなってしまうような微妙な芸能人を出してきます。清水圭とか。
で、そういったテレビ文化を中心とした最先端の時代を描くイメージがあるかもしれません。
でもクドカンは普遍的なテーマをさらっと描いていたりしますね。
今回はおばさん問題です。
なぜ、女の人はおばさんになるのか。
男にとっておばさんは未開のジャングルの原住民と同じです。全く理解できません。
とはいえ、三十代くらいから自分の中にもおばさん的な
ものがあることに気づいておばさん的な生き方もそれはそれでいいかもと思ったりもする。
そんなことをこのシナリオは描いているのではないでしょうか。
夏目漱石の時代と現代の日本のギャップ。
それも描いています。
しかしそんなテーマの話はいくらでもあります。
おばさんと男の違い。おばさんはなぜおばさんになったのか。
そこにクドカンの描きたいテーマがあるのに違いない。
あえて、ナウなヤングの観るドラマを書き続けてきたクドカンが昼ドラに挑戦したのはそういう意図があるのだ。
これはおばさんについて考えるシナリオなのだ。

まあ、それはそれとして絶妙なシチュエーションをクドカンは作りますね。
だんなはミュージカルのCDを作るために会社を辞める。
しかし、一緒に会社を立ち上げようとした友人は裏切る。
だんなは会社に戻ってやっぱりやめるのやめますと言う。
という微妙なシチュエーション。
現実ってこんなものです。

フレンズという大好きな海外ドラマではサプライズパーティーを開いてもらった本人が、サプライズだからよろこばなくてはいけないのに事前にそのことを知ってしまって喜ぶふりをする。
現実はそんなものかも。
サプライズパーティーが日常化していたら、サプライズではなくなり、喜ぶふりをする。
そんなリアルな瞬間が笑いに中に挟まっている。
良質なコメディやっぱりリアルでいいですね。

頭のいい脚本家はもう微妙な領域を描くところまで
来てますね。
視聴者も大量の映像を見ているのですこしでも前に観たこと
あるシーンはくだらないと思ってしまう。
それを乗り越える微妙なシーンを描くのは大変だと思います。
クドカンは見事にそれをやっています。